はじめに
社宅の管理を行う担当者の中には、社宅管理規定を作成すべきかどうか、作成する場合にはどのような事項を盛り込めば良いのか分からずに悩んでいる方も多いのではないでしょうか?社宅管理規定を作成せずに社宅を提供した場合、予期せぬトラブルが生じたことが原因で、企業の業務効率が低下する可能性もあるので注意が必要です。
この記事では、社宅管理規定作成の目的と明記すべきポイント、注意点について解説します。社宅管理規定の作成に悩んでいる担当者の方は、是非参考にしてみてください。
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社宅管理規定を作成する目的
会社の福利厚生の一環として社宅を提供している企業の担当者の中には、一般的な賃貸物件とは異なるため、「社宅管理規定をわざわざ作成しなくても良いのでは?」と考えている方もいると思います。社有社宅の場合、利用が自社の従業員だけに限られるため、社宅管理規定を作成する必要がなさそうですが、作成する必要はあるのでしょうか?
トラブル防止のため
借り上げ社宅には、自社の従業員だけでなく他の入居者も物件に住んでいます。賃貸契約書に記載されているルールを遵守すれば十分と言えますが、従業員は企業の顔で何かしらのトラブルが生じた場合は企業の信頼が低下することになるので注意が必要です。
また、社有社宅のように、利用が自社の従業員だけに限られる場合でも、ルールや決まりを設けていなければトラブルが発生する可能性があります。そのため、トラブル防止や社宅の手続きをスムーズに行うためにも、社宅管理規定は必ず作成しましょう。
社宅管理規定で明記しておくべき7つのポイント
社宅管理規定を作成すると言っても、必要事項が盛り込まれていなければ意味がありません。社宅管理規定で明記しておくべきポイントとして、以下の7つが挙げられます。
- 入居資格
- 賃料の負担額(%)
- 費用の負担範囲
- 入退去手続き
- 規定違反の対処法
- 規定の1条には「目的」と「どの会社の規定」なのかを明記する
- 附則としてその規定の実施日を記載する
それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
1.入居資格
社宅の入居資格を明確にしておかなければ、複数人で部屋を利用することによってトラブルが生じる、会社の費用負担が大きくなります。そのため、どのような従業員に入居資格があるのか事前に明確にしておくことが重要です。
例えば、「独身者のみ入居を認める」「配偶者や扶養者がいる場合、親、子供まで入居を認める」などです。現在の自宅から十分通える距離に住んでいる従業員の社宅の利用を認めた場合、不公平感が大きくなります。
そのため、入居資格を盛り込む際は、「現在の自宅から通うことが困難である場合のみ」「社宅を利用できる従業員は抽選によって決定する」など、不公平感を持たないように配慮しましょう。
借り上げ社宅で従業員の同棲を認めるかどうか、結婚した場合の規定については以下の記事で解説しています。
>>借り上げ社宅での同棲を認める?結婚した場合の社宅管理規定も解説
入居申し込みの方法
社宅の利用を希望する従業員がいても、入居申し込みの方法が明確でなければ、期日までに申し込み手続きを行えず、社宅を利用できないといったトラブルが生じる可能性があります。
そのため、入居申し込みの方法も盛り込んでおくことが重要です。社宅管理規定に入居申し込みの方法を盛り込む際は、どのような書類(例:社宅入居申込書)をどこに提出(例:総務部)しなければならないのかを明記しましょう。
2.賃料の負担額(%)
社宅管理規定には、従業員の賃料の負担額(%)がいくらか明記しておかなくてはなりません。その理由は、従業員から適切な賃料を受け取っていなければ、月額賃料との差額分が収入として見なされて課税対象となる可能性があるためです。
従業員の中には、「なぜ会社が全額負担してくれないのか」「なぜ○%に設定されているのか」という疑問を抱いている方もいます。従業員の理解を得るためにも、従業員に社宅利用について説明する際に賃料の負担が生じることを説明しておくことをおすすめします。
また、賃料の負担額に関連して、社宅の賃料が給与から控除される旨や月初ではなく途中から入居した場合の家賃の日割り計算に関する旨なども明記しておきましょう。
3.費用の負担範囲
社宅を従業員に提供する場合、仲介手数料や敷金、礼金といった物件を借りる際にかかる費用、水道光熱費や町内会費・火災保険料といった物件の利用に伴う費用を誰が負担するのか明確にしておく必要があります。
特に火災保険は重要なので個人に加入させる場合は必ず付保証明書を提出するようにしてください。
「社宅にかかる費用の全てを会社が負担してくれると思っていた」といったトラブルを未然に防ぐためにも、物件を借りる際にかかる費用は会社負担、物件の利用に伴う費用は従業員負担といったように負担する範囲を社宅管理規定に具体的に盛り込んでおきましょう。
借り上げ社宅の初期費用については以下の記事もご覧ください。
>>借り上げ社宅の初期費用は誰が負担する?会計処理の方法を紹介
4.入退去手続き
社宅は一般的な賃貸住宅とは異なる部分もありますが、入退去の手続きは通常通り行わなくてはなりません。
そのため、社宅管理規定には、入退去手続きに関する内容も明記しておく必要があります。入居時と退去時の手続きにおける明記しておくべきポイントをそれぞれ詳しく見ていきましょう。
入居時の手続き
入居時の手続きとして「入居が決まってから実際に入居するまでの期限」「期限までに入居しなかった場合の対応」「入居誓約書の提出の有無」「居住可能な期間」などを盛り込んでおきます。
契約期間終了後は、全額従業員負担の個人契約に切り替えてることによって居住継続を認める企業もいます。「そのような規定の存在を知らなかった」と後でトラブルになることを未然に防ぐために、必要事項の全てをしっかり明記しておきましょう。
退去時の手続き
退去時の手続きとして「退去が決まってから退去までの期限」「退去の申請方法」「退去時の会社の立会いの有無」などを盛り込んでおきます。
従業員が適切に部屋を使用していなかった場合、預けた敷金を超える修繕費用が発生する可能性もあります。超えた部分を従業員負担とする場合には、その旨も社宅管理規定に盛り込んでおきましょう。
社宅の退去費用負担については、以下の記事で詳しく解説しています。
>>社宅の退去費用は会社と入居者どちらが支払う?相場もご紹介!
5.規定違反の対処法
社宅管理規定を定めていても、規定に違反した場合の罰則が記載されていなければ定める意味がありません。社宅管理規定の内容を従業員に遵守させるために、規定違反の対処法について明記しておくことも重要です。
例えば「従業員が重大な規定違反を行った場合は立退きを命じることができる」「立退きを命じられた場合は○日以内に退去する」「規定違反による立退きでは、立退き料や引越し費用を会社が負担しない」などです。規定違反の対処法を明記すれば、従業員の規定違反のリスクを抑えられるでしょう。
6.規定の1条には「目的」と「どの会社の規定」なのかを明記する
社宅管理規定は会社ごとに作成されます。そのため、社宅管理規定の1条にはどの会社の社宅管理規定なのか分かるように「株式会社○○の社宅」と明記しておく必要があります。
また、何のための社宅管理規定なのか分かるように「社宅の管理や運用に対するもの」「社宅の提供・利用で未然にトラブルを防ぐためのもの」である旨も明記しておきましょう。
7.附則としてその規定の実施日を記載する
社宅管理規定は従業員ごとに作成されるため、規定の実施日も従業員ごとに異なります。そのため、社宅管理規定を作成する際は、附則としてその規定がいつから実施されるのかを明記しておかなくてはなりません。
「この規定は令和○年○月○日から施行する」と規定の実施日を社宅管理規定に盛り込むことを忘れないよう注意しましょう。
社宅管理規定の雛形
社宅管理規定を1から作成することは、なかなか容易ではありません。そこで、以下に社宅管理規定の雛形を用意しました。
必要に応じて追加、修正してご使用ください。
第1条(目的)
この規定は、社員の福利厚生の向上のために、株式会社◯◯の社宅の管理および運用に必要な事項を定める。
第2条(入居資格)
社宅の入居資格を有する者は、独身社員および配偶者もしくは同居する3親等以内の家族がいる社員とする。ただし、会社が特別に認めた場合はこの限りではない。
第3条(入居申込み)
社宅の入居を希望する者は、所定の申込書に必要事項を記入して担当部署に提出しなければならない。
第4条(入居手続き)
入居を許可された者は、入居日までに入居誓約書を提出しなければならない。指定日までに入居しなければ、入居を取り消すことがある。
第5条(入居期間)
入居期間は入居してから満◯年間を上限とする。期間満了後は、直ちに退去しなければならない。
第6条(使用料)
社宅の使用料は月額賃借料の◯◯%とし、毎月会社に支払わなければならない。なお、社宅の使用料は当月分給与から控除するものとする。月の途中で入居または退去する場合の使用料は日割り計算とする。
第7条(費用負担)
入居者は下記の費用負担しなければならない。
・電気、ガス、水道使用料、清掃衛生費
・その他会社が入居者負担と認めた費用
第8条(敷金・礼金)
社宅の仲介業者に支払う仲介料、家主に支払う敷金・礼金は会社負担とする。
第9条(退去手続き)
入居者は、社宅を退去する場合は〇〇日前までに所属長を経由し、所定の退去届を担当部署に提出しなければならない。退去する際は、担当部署の点検を受け、原状に回復してから返還するものとする。
第10条(退去事由)
入居者が次の各号に該当する場合は、○〇日以内に退去しなければならない。ただし、会社がやむを得ないと認めた場合はこの限りではない。
・退職または解雇によって社員でなくなったとき 期限〇〇日
・転勤または転居で社宅から通勤できなくなったとき 期限〇〇日
・規定に違反し、退居を命じられたとき 期限〇〇日
・住居を取得したとき 期限〇〇日
第11条
その他、総務部長の判断により決定する。
附 則
この規定は、令和〇〇年〇〇月〇〇日から実施する。
社宅管理規定を変更する際の5つの注意点
一度作成した社宅管理規定は、必要に応じて見直して内容を変更していく必要があります。必要に応じて適宜変更すれば良いと思っている方も多いかもしれませんが、社宅管理規定を変更する場合は、以下の5つの点に注意が必要です。
- 社員の了承を得る
- 社員が理解できるよう変更点をまとめる
- 必要に応じて入居誓約書も変更
- 原案を作成して抜けをチェック
- 労働基準監督署へ届出
それぞれの注意点を詳しく見ていきましょう。
1.社員の了承を得る
従業員の了承を得ないまま社宅管理規定を変更すると、従業員の満足度が低下する、後でトラブルに発展する可能性があります。そのため、社宅管理規定を変更する際は、必ず了承を得ることが重要です。
変更前にアンケートを実施するまたは説明会を開催し、反対意見がある場合は不公平にならない内容にする、反対派の従業員と個別に話し合って理解を得るなど、必ず了承を得てから変更しましょう。
2.社員が理解できるよう変更点をまとめる
変更後の社宅管理規定を渡されたとしても、どの部分がどのように変更されたのか従業員が理解できません。そのため、従業員が容易に変更箇所を理解できるように、変更点をまとめた書類を用意する必要があります。
変更点を書類にまとめる際は社宅管理規定を変更した目的、変更した項目を明記するだけでなく、配り忘れや確認漏れがないように、書類配布以外にメールでの共有、掲示板への掲載なども行いましょう。
3.必要に応じて入居誓約書も変更
社宅を提供している会社の中には、社宅に入居する際に従業員に提出してもらう入居誓約書に社宅管理規定の内容を一部記載しているところもあります。
社宅管理規定を変更したにもかかわらず、入居誓約書の内容は変更していなければ、後でトラブルに発展する可能性があるため、必要に応じて入居誓約書も変更する必要があります。変更がある場合、雛形を書き直す、入居誓約書から社宅管理規定の内容を省いておきましょう。
4.原案を作成して抜けをチェック
社宅管理規定を変更する際は、まず変更内容をまとめた原案を作成します。不公平な点や漏れがあった場合、後でトラブルに発展する可能性があるため、それらの有無をチェックします。
社内チェックだけでは会社目線になるため、不公平な点に気づかないまま作成することも珍しくありません。トラブルを未然に防ぐためにも、社宅代行会社といった第三者に確認してもらいましょう。
5.労働基準監督署へ届出
社宅管理規定を作成する際は、労働基準監督署に届出を行う必要があります。しかし、時間と手間の関係で、労働基準監督署に届出を行わずに社内だけで完結することがほとんどです。
「自社も届出を行わなくても問題ない」と思っている方もいるかもしれませんが、労働時間や賃金、賞与など労働基準法第89条の絶対的必要記載事項や相対的必要記載事項を変更する場合は、労働基準監督署への届出が義務化されています。
届出には、社宅管理規定の変更の素案や組合代表や代表社員の意見書などが必要になります。速やかに変更を完了させたい方は、社宅管理の専門家である社宅代行会社に相談した方が良いでしょう。
社宅管理業務が手一杯な時は「社宅代行」を利用しましょう
支店を多数抱える企業の場合、転勤による住居負担が大きくなるため、社宅提供を行うことによって従業員の福利厚生を充実させることが可能です。その結果、従業員の満足度が向上し、離職率低下につながります。
しかし、適切な社宅提供を行っていなければ、従業員の満足度が低下し、離職率が上昇する可能性もあるので注意が必要です。適切な社宅提供を行うためには、社宅管理規定の作成が必要不可欠ですが、従業員の意見も踏まえなくてはなりません。
1から社宅管理規定を作成するのは難しく、社宅提供後は従業員が規定を遵守できているか会社がチェックする必要があります。
社宅提供には上記のように手間と時間がかかりますが、社宅代行会社を利用すれば、社宅管理規定の作成から日常の管理まで幅広く任せられるため、担当者の負担を大幅に軽減できます。
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まとめ
福利厚生の一環で社宅を提供することによって、従業員の満足度を向上させる効果が期待できます。しかし、社宅利用のルールが明確になっておらず、それが原因でトラブルが生じた場合は、従業員の満足度が低下して離職率の上昇につながる可能性があるので注意が必要です。
従業員が安心して社宅を利用できる環境を整えるためには、社宅管理規定の作成が必要不可欠です。しかし、社宅管理規定を1から作成するのは、なかなか容易ではありません
この記事には、社宅管理規定を作成する際のポイントと注意点をまとめています。作成にかかる手間と時間を少しでも省きたいと考えている方は、社宅の専門家である社宅代行会社に相談すれば社宅管理規定の作成から管理まで幅広くサポートしてくれるでしょう。
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