はじめに
福利厚生の一環で社宅の提供を検討している企業や既に提供している企業の中には、社宅管理にかかる手間を軽減できる方法がないか探している人もいると思います。
社宅代行サービスは社宅管理に関する業務を代わりに行ってくれるため、社宅管理にかかる手間を省くことが可能ですが、社宅代行サービスでは具体的にどのような業務を行ってくれるのでしょうか?
この記事では、昨今流行りの借り上げ住宅に的を絞って、社宅代行サービスとはどのような業務を行うのか、必要な理由や業者の選び方について解説します。社宅管理にかかる手間を軽減したい人は是非参考にしてみてください。
社宅管理業務でやること
福利厚生の一環として従業員に提供する社宅には、会社が物件を所有して従業員に貸し出す社有社宅、一般の賃貸住宅を借り上げる借り上げ社宅、他の企業と物件を共有する寮などがあります。この記事で取り扱うのは昨今流行りの借り上げ住宅です。
会社は社宅を従業員が利用する際のトラブルを未然に防ぐために、社宅管理規定というルールを定めて社宅の管理を行います。社宅管理規定を定める際は、万が一に備えて「損害賠償ルール」の規定を設けておいた方が良いと言えます。
会社が社宅を提供する際は、入退去の管理、社宅の確保や契約・解約などの管理業務を行わなくてはならず、業務負担が増えるので注意が必要です。具体的にどのような管理業務を行う必要があるのか詳しく見ていきましょう。
1.新規契約業務
従業員に社宅を提供することになった場合や既に社宅を提供していて新たに従業員を雇用した場合は、社宅を用意しなければなりません。
社宅を用意する際は、最初に入居対象となる従業員の基準や社宅の入居条件、入居期間などの諸条件を決める必要があります。社宅を利用できるのは従業員に限られるため、同居家族をどこまで含めるのかをあらかじめ決めなくてはなりません。
諸条件の設定だけではなく、諸条件に該当しているかどうかを確認するための審査、社宅の確保に契約などを行う必要があります。従業員の雇用や転勤などが重なる4月は、数多くの新規契約業務をこなすことになって担当者の負担が増えるので注意しましょう。
2.更新業務
契約期日を迎えた場合は更新業務を行わなくてはなりません。更新業務では、これまでの家賃の支払い状況、同居者の増減などを確認します。その後、契約の更新を行うかどうかを判断し、更新する場合は更新後の契約内容が原契約と同一かどうかをチェックしながら更新手続きを進めます。
更新時は物件オーナーから家賃の値上げを要求されることがある一方で、家賃の値下げ交渉のチャンスです。しかし、家賃の値上げ要求の断りや値下げ要求は交渉が難航する可能性が高いため、手間と時間がかかる点に注意しましょう。
3.解約業務
社宅は企業の従業員しか利用できません。そのため、従業員が退職すると、社宅の解約手続きを行わなくてはなりません。また、退職していない場合でも、収入や貯金の増加や家族構成の変化を理由に社宅から持ち家に変更する、転勤になった場合も解約手続きを行います。
転勤が重なりやすい4月や9月は、担当者は多くの解約業務をこなすことになって担当者の負担が増えるので注意しましょう。
4.月次業務
入居者に契約更新や入居期限の通知などを行います。社有社宅で管理人を配置している場合は、管理人からの報告を受けた建物の整備、点検、衛生管理の状況などから適切な修繕を指示するまたは業者を手配するなどの業務も月次業務に含まれます。
法改正や社宅ルールの改正によって現状の社宅管理規定の内容を変更しなければならない場合は、現状に合う内容に変更しなければならないなど、入退去以外にも管理業務は多数あるので注意しましょう。
5.年次処理
年間の家賃支払額が15万円を超える場合、税務署に不動産使用料などの支払調書を年に一度、提出することが義務付けられています。この支払調書作成作業は社宅管理業務「最大の負担」と言われています。
この支払調書には、貸主のマイナンバーを記載する必要があり、借り上げ社宅で貸主が個人の場合、大家さんにマイナンバーの提出を求めなければならなりません。
従業員からマイナンバーを集めるのはそれほど難しくはないですが、大家さんからマイナンバーを聞き出すのは容易ではありません。特に全国に数多くの借り上げ社宅を持っている会社はさらに大変です。
マイナンバーは極めて重要な個人情報になるため、取り扱いには十分注意するが必要があり、社内の情報管理システムの見直しや、情報漏洩防止策などセキュリティの強化を検討してリスク回避することは必須です。
また、このような事務的な作業の他にも、社宅の家賃負担額や、社宅の管理を総務部や人事部の担当者が行っている場合は、業務負担が増えて担当者の残業代といったコスト面を見直す必要があります。
このように社宅を従業員に提供するまたは管理を企業内で行うことでコストが増えた場合、会社経営に支障を生じさせる可能性があるので注意が必要です。
社宅の利用者がどのくらいいて、会社経営にどのような影響を与えているのかを見直すことも重要と言えるでしょう。
6.トラブル処理
借り上げ社宅では、契約に関するトラブル、入居者間または近隣住民とのトラブルが生じる可能性があるので注意が必要です。
これらのトラブル処理は社宅の管理の担当者が行わなくてはなりません。法的なトラブルに発展した場合は、専門家である弁護士を手配しなくてはならないといった手間がかかる可能性もあります。
社宅管理業務についてさらに詳しく知りたい方に向けた記事も用意しています。
もっと社宅管理業務について知りたい方は、こちらをご覧ください。
>>自社運用と代行運用の工数比較。代行のメリットについて、「転貸」「代行」の違いを比較
社宅管理業務をアウトソースするという選択
従業員に社宅を提供している企業の中には「社宅の管理は企業内で行うもの」と考える企業も多いのではないでしょうか?これまでの企業経営は、業務に必要な部署を新たに設立して対応するケースが多かったものの、最近では外部に委託してコンパクトな経営に切り替える企業も増えています。
社宅管理業務も外部に委託できるのでしょうか?社宅管理業務を企業内で行う場合の問題点、社宅管理業務を外部に委託できるかどうか、委託する理由などを詳しく見ていきましょう。
社宅管理業務は結構大変
社宅の管理を企業内で行う場合は、多くの業務をこなさなくてはならない、専門的な知識を必要とするため、総務部や人事部などの担当者の負担が増えてしまいます。
社宅の管理は常に忙しいわけではありません。そのため、通常の業務と並行しながら社宅の管理を行うことになります。4月や9月などの新入社員の雇用や転勤などで社宅の管理が忙しい時期は、残業が当たり前になって従業員の不満がたまるだけでなく残業代の負担が重くのしかかるので注意が必要です。
社宅の管理を専門に行う従業員を確保するという対策が挙げられますが、その従業員が辞めてしまうと、次の従業員を確保できるまでは社宅の管理に関する業務が滞ります。社宅管理業務は負担やリスクが大きいため、企業内で扱うのは大変と言えるでしょう。
社宅管理業務はアウトソースできる
社宅管理業務の代行を手掛けている業者もあるため、社宅管理業務は外部に委託することが可能です。外部に委託することには、総務部や人事部などの担当者の負担を軽減できる、リスクを軽減できるなどのメリットを伴いますが、委託すると費用がかかる、個人情報の漏洩のリスクがあるなどのデメリットも伴います。
総務部や人事部などの担当者の負担を軽減できれば、新たな人材の雇用にかかる費用や残業代などのコストを抑えられます。そのため、外部に委託するかどうかを決める際は、外部に委託することでコストの削減効果が期待できるかどうかをしっかりと確認してから委託することが重要です。
また、個人情報保護にどのような対策を練っているのかを事前に確認しておけば、個人情報の漏洩のリスクを少しでも抑えられるでしょう。
社宅管理業務をアウトソースする理由
社宅の管理には専門的な知識が必要です。複数人の従業員で分担して管理を行っていれば問題ありませんが、専門的な知識を有する1人の従業員が担当していると、他の従業員は業務内容を全く理解できなくなります。もし、その従業員が退職すると、他の従業員では管理を行えないため、社宅管理業務が滞る可能性があるので注意が必要です。
このようなリスクを軽減するには複数の従業員での分担が理想ですが、業務量は月ごとに大きく異なるため、従業員の配置が難しいと言えます。
社宅管理業務を外部に委託することで、業務量の変動を気にせず本来の業務に専念できます。従業員の負担の軽減によって残業を減らせば従業員のモチベーションを高めることが可能です。社宅管理業務は必ず企業内で行わなければならない業務とは言えません。
外部委託で負担軽減を軽減して業務効率を高めれば会社の業績アップも期待できるでしょう。
社宅管理代行会社を選ぶ7つのポイント
社宅管理代行会社であればどのような代行会社を選んでも問題ないわけではありません。選んだ社宅管理代行会社によっては業務内容に差がある、契約後にトラブルに発展する可能性があるため、しっかりと選ぶ必要があります。
続いて社宅管理代行会社を選ぶ際のポイントを詳しく見ていきましょう。
1.実績が長くノウハウが蓄積されている会社か
実績が短い社宅管理代行会社は、社宅管理代行を行うにあたって十分なノウハウが蓄積されていないケースが多いと言えます。そのため、社宅管理代行を依頼しても納得できるサポートを受けられない可能性があるので注意が必要です。
一方、実績が長い社宅管理代行会社であれば、十分なノウハウが蓄積されているため、納得できるサポートを受けられる可能性が高いと言えます。
そのため、社宅管理代行会社を選ぶ場合は、実績数ではなく実績年数が長くノウハウが蓄積されている会社を選びましょう。
2.サービスメニューの充実さと、柔軟性がある会社か
社宅管理代行会社によってサービスメニューの内容は異なるので注意が必要です。管理代行費用が安いという理由で会社を選ぶとサービスメニューが物足りない、サービスメニューが充実している会社を選ぶと管理代行費用が高い可能性があるため、サービスメニューと管理代行費用のバランスをあらかじめ把握しておいた方が良いと言えます。
サービスメニューの内容や料金設定だけでなく、サービスメニューを減らす・増やすといったカスタマイズが可能かどうかという柔軟性の高さも、社宅管理代行会社を選ぶ際の重要なポイントと言えるでしょう。
3.全国対応してくれる会社か
全国に支店を構えている企業が従業員に社宅を提供する際は、全国各地に社宅を確保しなければなりません。社宅管理代行会社の対応範囲が限られていると、一部の支店ではサポートを受けられず、複数の社宅管理代行会社に対応を依頼することになるので手間がかかります。
そのため、全国に支店を構えている企業が従業員に借り上げ社宅を提供する場合は、全国対応してくれる社宅代行管理会社に管理を委託した方が良いと言えるでしょう。
4.物件の斡旋方法
社宅管理代行会社ごとに物件の斡旋方法は異なります。例えば、専門スタッフが在籍している、社宅管理代行会社が賃貸借契約を締結していて転貸として貸し出す、外部の不動産会社と提携しているなどです。
「社宅の管理を代行してくれるという点は変わらないので斡旋方法の違いは気にしなくてもよいのでは?」と思っている方も多いかもしれませんが、そうとは言い切れません。斡旋してくれる物件数や部屋の質に影響を与えるため、迅速に物件を提案できる体制がしっかりと整っている社宅管理代行会社を選びましょう。
5.機密情報の管理体制はしっかりしている会社か
社宅代行管理会社に社宅の管理を委託する場合には、社宅代行管理会社が社宅を利用する従業員の個人情報を把握することになります。
社宅代行管理会社の個人情報の保護体制がしっかり整っていなければ、個人情報漏洩によるトラブルが生じる可能性があるので注意が必要です。
そのため、社宅代行管理会社に管理を委託する際は、従業員が安心して社宅を利用できるように、個人情報をどのように管理しているのかをしっかりと確認してから契約しましょう。
6.社宅管理代行業務以外の相談もできる会社か
社宅管理代行会社の業務は社宅の管理に限られていると思っている人もいるかもしれませんが、社宅管理代行会社によっては、マイナンバー収集や火災保険の提案なども行っている企業もあります。
社宅管理代行業務以外のサポートに対応していればさらに業務負担を軽減できるため、社宅の管理の担当者は他の業務に専念することによってより業務効率が高まるでしょう。
7.信頼できる担当者がいる会社か
社宅管理代行会社がしっかりしていても、頼りない担当者がサポートについていると、満足できるサポートを受けられない可能性があるので注意が必要です。
そのため、信頼できる担当者がいる社宅管理代行会社を選ぶのがポイントと言えますが、その担当者が会社を辞めた場合も想定しておかなくてはなりません。社宅管理代行会社を選ぶ際は、一度事務所に足を運んでみてどのような担当者がいるのかを一通り確認しておいた方が良いと言えるでしょう。
まとめ
福利厚生の一環として従業員に社宅を提供している企業の中には、社宅の管理に手間がかかっていて、何とか管理の手間を省きたいと考えている企業も多いと思います。
社宅管理代行会社に社宅の管理を任せれば管理にかかる手間を省けますが、会社ごとに契約方法や業務内容が異なるため、しっかり社宅管理代行会社を選ぶことが重要です。
この記事には、社宅管理代行サービスの業務内容と社宅管理代行会社の選び方などをまとめています。記事の内容をしっかり確認してから社宅管理代行会社を選べば、会社選びを誤ってトラブルが生じるというリスクを抑えながら社宅の管理の手間を省けるでしょう。