はじめに
現在、借り上げ社宅に入居している従業員が結婚したり、結婚予定で同棲を希望していたりする場合に、どのように対応すればよいのかわからず、お困りの社宅担当の方はいらっしゃいませんか。社宅は、従業員向けの福利厚生のひとつですが、「家族になった・これからなる」といったときの取り扱いは、各企業の社宅管理規定によって対応方法が変わります。
ここでは、借り上げ社宅での同棲や、結婚後の入居について、各企業での判断例や社宅管理規定項目を定める際の注意点について解説します。同棲や結婚をする従業員が出てきた際に慌てないよう、事前に規定を明記してトラブルが起こらないようにしましょう。
「社宅管理規定の作成」や「結婚に関わる社宅の取り扱い」などの社宅管理に関するお困りごとは、LIXILリアルティの社宅管理代行サービスにぜひご相談ください。
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借り上げ社宅とは
結婚前後、また同棲での社宅利用について検討する前に、社宅制度について改めて確認しておきましょう。
社宅制度とは
社宅制度とは、企業が従業員に対して提供する福利厚生のひとつです。従業員の住環境をサポートする役目を担い、企業が住宅を貸与します。一般的な賃貸物件よりも安価な賃料で入居できることが多いため、近年、人気の高い福利厚生となっています。
従業員にとっては、金銭的負担が少ないことだけでなく、勤務地から近い場所に設置されていることが多いため、通勤時間が短くなりワーク・ライフ・バランスを充実させやすい制度でもあります。企業にとっても、通勤手当の削減ができるほか、全国各地に事業所がある企業では、転勤時にも住居を確保できることで、従業員の転勤への心理的・金銭的負担を減らし、人材の流動を推進しやすくなります。採用時にも、福利厚生が充実していることがアピールポイントとなり、差別化ができるのも大きなメリットです。
借り上げ社宅とは
社宅には、企業が所有するアパートなどの物件を提供する「社有社宅」と、企業が不動産業者と賃貸借契約を結び、賃料を一部負担しながら従業員に貸与する「借り上げ社宅」があります。
社有社宅は、企業が管理する物件のため、丸々一棟を従業員のみで構成することが可能で、社宅内での従業員同士のコミュニケーション活性化につながります。従業員にとっては賃料が景況に左右されにくく、安価であることが多いため、金銭的なメリットがあります。しかし企業側にとっては、初期投資や老朽化に伴う補修や建て替え、固定資産税など、大きな費用の負担が発生する点がデメリットです。
借り上げ社宅は、従業員がライフスタイルに合わせて物件を選択できるのがメリットです。企業がすでに契約している賃貸物件から選択するケースと、従業員自身が探してきた住居の不動産契約を企業が結ぶケースとがあります。また、必要な期間に絞った契約をすれば、空室になっている物件の家賃を無駄に支払うことがなく、コストカットにもなります。維持・管理も不動産業者や管理会社に任せられるため、企業側の業務負担が少なく済むだけでなく、毎月発生する賃料を経費として計上できるため、節税対策にもつながります。
借り上げ社宅での同棲を認めるか
従業員から、借り上げ社宅での同棲や、結婚はしていないものの婚約している状態での同居が可能かという相談があった場合は、どのように対応すればよいのでしょうか。一般的な例をご紹介します。
借り上げ社宅における同棲
社宅は、従業員への福利厚生のひとつとして提供している住居です。そのため基本的には従業員とその家族の生活を支えるための制度であるため、独身社員が借り上げ社宅で恋人や婚約者と同棲することを認めていない企業が多いです。
しかし、社宅を利用することで家賃負担が軽減されるため、社宅管理規定で認められていないにも関わらず、同棲しようとする従業員もいます。企業側へ申告せずに同棲している場合や、社宅管理規定に同棲禁止を明記している際は、規定違反に当たるため、従業員に説明と厳重注意を行うようにしましょう。また違反に対する規定があれば、その内容に沿った対処が必要です。
従業員から婚約の報告があった場合
従業員から婚約の報告があり、あと数か月で結婚して家族になる状況での同棲についても認めていない企業が多いです。同棲が認められない理由には、社宅管理規定の定めだけでなく、賃貸契約上、単身者向け物件となっていて複数人での入居ができないため、ということが考えられます。一方で、婚約中である場合は家族向け社宅の入居であれば認めるなど、柔軟に対応している企業もあります。
婚約中の同棲を認める場合でも、婚約していることの証明や、入籍までの期限を設けるなど、社宅管理規定に条件をきちんと定め、あいまいな状態にしないようにしましょう。
結婚した従業員への社宅貸与に関する規定
では、結婚をした従業員への社宅貸与はどのように対応すればよいのでしょうか。通常は、単身者向け社宅に入居していた場合は、家族向け社宅へ移るか自身で賃貸契約を結ぶかのどちらかの方法がとられるため、特に細かな規定は不要なように感じられます。しかし、結婚して共働き世帯になった場合、福利厚生としてどこまでサポートすべきなのか、夫婦が同じ職場で働いている場合はどのように扱えばよいのかなど、社宅貸与に関する規定をしっかり定めておく必要があります。
結婚して共働き世帯になった場合
従業員が結婚して共働きになった場合は、世帯収入が増えるため、社宅の利用を認めるかどうかを改めて判断する必要があります。法律上は、共働き世帯への社宅貸与について特に定めはなく、各企業の判断に委ねられています。
そのため、結婚して共働き世帯になった場合は、社宅を退去して従業員自身が物件の契約をするように定めている企業や、単身者向け社宅は退去となるものの、家族向けの借り上げ社宅に変更する企業もあるなど、対応はさまざまです。
一人暮らし向け、家族向けの借り上げ社宅の間取りや家賃相場については、以下の記事で解説しています。
>>借り上げ社宅の間取りに決まりはあるのか?一般的な家賃相場についても解説
夫婦が同じ職場で働いている場合の注意点
結婚した従業員夫婦がどちらも同じ企業で働いている場合は、職場が異なる家庭や単身者との不公平感が出ないよう、注意が必要です。社宅利用料の負担額または負担割合が単身者と同じになるよう、一方のみが賃料補助の対象となる形で調整する方法が多く見られます。また、社宅利用料も双方から徴収しないよう、夫婦のどちらから徴収するのかも取り決めておきましょう。
同棲・結婚に関わる社宅管理規定項目で注意すべき3つのポイント
従業員の同棲・結婚が関わる社宅管理規定項目は、ほかの従業員との不公平感が出るとトラブルに発展する可能性があります。そのため、社宅管理規定項目は、不満が出ないよう留意しながら、明確に定めるようにしましょう。ここでは、特に注意しておきたいポイントを3つご紹介します
1.入居可能な人の範囲を明確にする
社宅管理規定項目では、入居可能な人の範囲を単身者向け、家族向けそれぞれで明確に定めておくようにしましょう。特に、同棲について認めるのか、認めないのかを定め、それぞれ条件も細かく明記します。たとえば、「入籍の予定がある場合は認める」「婚約したことを証明できる場合のみ認める」「何か月以内に入籍する場合は認める」など、単なる人数の制限だけではなく、詳細な規定を設けておくとよいでしょう。
また、入居を認めていない人を住まわせた場合など、違反した際の規定や対処についても具体的に記載しておく必要があります。
2.入居者の人数が変わった場合の対応について定めておく
社宅入居中の結婚・離婚・出産などにより、入居人数が変わることもあります。その場合の社内手続きの方法や提出書類、社宅利用料負担に関する項目も、規定に定めておくようにしましょう。中には、入居人数によって、居住できる物件の広さや、社宅利用料の負担割合が変わるように規定を定めている企業もあります。その場合は、条件を明記したうえで、手続き方法などを明確にしておかないとトラブルになる可能性があるため注意が必要です。
また、子どもが増え、社宅が手狭になった場合の社宅変更を認めるかどうかも、あらかじめ規定として定めておくとよいでしょう。その際、新居の初期費用や退去費用などを、企業と従業員のどちらが負担するのか、といった細かな点についても規定項目として挙げておくとスムーズに手続きできます。
借り上げ社宅の初期費用については以下の記事で解説しています。
>>借り上げ社宅の初期費用は誰が負担する?会計処理の方法を紹介
3.特例を認める場合は公平さを欠かないようにする
どんなに細かく規定を定めていても、個別の事情によって特例を認めるかどうかの判断に迫られることは起こり得ます。特別な事情に応じるかどうかについても、事前に規定の中に記載しておくほうが安心です。
特例を認める場合は、公平さを欠かないように判断する必要があります。従業員から事情を聞いたうえで、特例として同棲や、結婚後に社宅を変更せずに入居を続けることを認める場合には、ほかの従業員が不公平感を抱かないよう配慮しなければなりません。
たとえば、特例として同棲を認めたものの、社宅利用料の負担額が単身の従業員と同じであると、不満があがる可能性もあります。「単身者向けの借り上げ社宅でも特例として同棲を認めるが、社宅利用料の負担額は家族向けと同様とする」など該当する従業員だけでなく、従業員全体が満足できるような社宅運用を心がけ、慎重に判断するようにしましょう。
従業員の同棲・結婚に関わる社宅管理規定の作成でお困りなら
従業員の同棲や結婚など、居住状況に変化がある従業員への社宅の貸与は、社宅管理規定の項目を細かく設定し、トラブルを防止して、気持ちよく社宅を利用してもらえるように進めることが重要です。しかし、社宅管理規定を詳細に作ろうとすると、多くの項目が必要となり、作業も煩雑になります。漏れなく作らなければならないというプレッシャーもあり、作成にかかる負担が大きいと感じている方も多いのではないでしょうか。また作成後、社宅を提供している間は、従業員が規定を遵守できているかチェックしていく必要もあります。
借り上げ社宅の同棲や結婚に関わる社宅管理規定など、手間と時間のかかる作業は社宅代行サービスを利用して効率化を目指しませんか。社宅代行サービスは、社宅に関する煩雑な手続きや、社宅管理規定項目を定め適正に従業員が利用しているかの管理まで任せられるサービスです。
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社宅管理規定の作成については以下の記事でもご紹介しています。
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まとめ
社宅に入居している従業員が同棲や結婚をする際は、単なる社宅への入居とは異なり、留意すべき点が多く細やかな配慮を必要とします。同棲を認める場合も、認めない場合も、細かく条件をつけておいたり、結婚時も職場が同じなのか別なのか、共働きになるのかで条件を変更したりと、さまざまなケースを想定して社宅管理規定を定めておかなければなりません。また、規定を定めるときには、該当する従業員だけでなく、ほかの従業員から不公平感が出ないよう注意も必要です。
トラブルなくスムーズな社宅の運用のために、社宅管理規定は定期的に見直して、従業員が気持ちよく社宅を利用できるように整えましょう。