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社宅の消費税は非課税?課税?税務上の扱いと仕訳方法を解説

はじめに

社宅に関する消費税の仕組みや適用条件などを把握し、税務リスクを最小限に抑えたいという人事・総務担当者や、中間管理職の方も多いのではないでしょうか。社宅で発生する費用は項目によって課税・非課税の扱いが変わるため、全般的な知識を身に付けておくことが大切です。

今回は、消費税の概要について触れたうえで、社宅に関する費用や、住宅手当を支給している場合の消費税の取り扱いなどについて解説します。社宅にかかる消費税の仕訳処理方法なども紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

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消費税とは

電卓の上に置かれた「消費税」の文字が記されたブロック

消費税とは、物の売買や、サービスを受ける消費に対して課される税金のことです。消費者が負担をし、事業者が納付する形の税金で、社会保障費の主な財源となっています。消費一般に対して課される税金ですが、取引の内容によって、課税・非課税に分けられています。ここでは、課税取引と非課税取引について、簡単に紹介します。

課税取引と非課税取引

課税取引とは、国内で事業者がモノ・サービスを提供して対価を得る際に、消費税が課される取引を指します。商品の販売や運送、広告など、事業者が対価を得る取引の大半に消費税は課されます。
一方、非課税取引とは、消費税の特性や社会政策的な配慮などを踏まえて、消費税が課税されない取引のことです。具体的には、住宅の貸付けや土地の譲渡・貸付け、社会保険医療の給付などが挙げられます。社宅制度の費用は、このうち住宅の貸付けに該当し、非課税取引として扱われます。

社宅に関する費用の消費税の取り扱い

消費税の計算をする人

社宅に関する費用の消費税は、消費税法で非課税取引の対象となっているため、基本的に消費税はかかりません。社宅制度は「企業が賃貸物件を借り上げた上で従業員に貸し出す」という仕組みであり、住宅の貸付けは社会政策的配慮により、非課税取引に区分されているためです。
具体的には、以下のような費用が非課税となります。

  • 借上げ料
  • 従業員からの賃料
  • 共益費・管理費

しかし、社宅制度を運営するうえではさまざまな費用を扱うことがあり、課税対象となる取引も存在します。社宅制度の運営で発生する課税取引にあたる費用は以下のとおりです。

  • 管理にかかる費用
  • 駐車場費や水道光熱費

ここでは、社宅に関する費用ごとの消費税の取り扱いについて、詳しく見ていきましょう。

【非課税】住居取得費または借上げ料

住居の取得にかかる消費税の取り扱いは、大きく2つのパターンに分かれます。1つ目は、企業が社有社宅として従業員に貸し出すために不動産を購入する際にかかる住居取得費です。
住宅取得費は、建物を購入するため消費税の課税対象となります。従業員から使用料を徴収する場合は、居住用賃貸建物に該当するので仕入税額控除の対象から外れることにも注意が必要です。住居取得の時点で、従業員に無償で貸し付けることを明らかにし、居住用賃貸建物に該当しないようにすることで、仕入税額控除の対象とすることもできます。

2つ目は、法人として社宅の賃貸契約を結んで従業員に貸し出す際の借上げ料です。ただし、社宅を借り上げる際に不動産会社へ支払う仲介手数料は課税の対象となります。また、賃貸借契約を結ぶ際に支払う費用のうち返還されない敷金、及び居住用として利用する場合の礼金は非課税の扱いです。

【非課税】従業員からの賃料

企業が借り上げている物件を社宅として従業員に貸し出す場合、その従業員から受け取る賃料は住宅家賃に該当するので、消費税は課されません。
なお、企業が社宅の賃料を従業員から徴収する際は、給与から天引きすることが基本となるため注意しましょう。消費税の負担を抑えられる社宅制度は、企業と従業員の双方にとって利点があるといえるでしょう。

【非課税】共益費・管理費

社宅物件の維持にかかる共益費・管理費は、支払わないと居住できない費用のため、家賃に準ずるものとして取り扱われています。そのため、家賃と同様に消費税が課されません。
共益費・管理費は、借家人が共同で利用する設備や、施設の運営・維持に関する費用を指し、両者に明確な違いはないとされています。これらの費用は、廊下・エレベーター・階段などの電気代や、浄化槽の保守点検などにかかる費用に充てられます。
なお、共益費・管理費の費用は、家賃に対して5%~10%程度であることが一般的です。たとえば、家賃が10万円の賃貸物件の場合、共益費・管理費の目安は5,000円~10,000円程度となります。

社宅の共益費の勘定科目や相場について詳しくまとめた記事がございます。
>>社宅の更新料は誰が払う?消費税から勘定科目まで一挙解説!

【課税】管理にかかる費用

前述した管理費以外に、社宅を管理するうえで発生する清掃・修繕・入居者募集の宣伝などの管理に関係する費用は、消費税の課税対象となっています。
たとえば、台風などの自然災害で社宅の共有部分が損傷し、修繕が発生した場合にかかる費用は、社宅の管理に必要な費用として取り扱われます。そのため、住居の管理にかかる費用として消費税が課されます。また、社宅入居者を募集する宣伝活動に向けて、ポスターやチラシを作成する場合も同様に消費税の課税対象となります。 しかし、清掃・修繕に関する費用を、共益費・管理費からの支出として取り扱う場合は非課税になります。清掃・修繕が必要になった際、借り上げ社宅の場合は、不動産会社や大家に共益費・管理費から支出することを相談してみるのもよいかもしれません。なお、社有社宅の場合は、社内の規約で定めておくことで、修繕発生時にかかる費用を共益費・管理費として処理することができます。

【課税】駐車場費や水道光熱費

従業員が使用する駐車場費は、一定の条件を満たさない場合、消費税が課されます。非課税対象として扱うには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 集合住宅に駐車場が付設している
  • 家賃と別に駐車場使用料等を徴収していない

上記のうち、集合住宅に駐車場が付設している状態とは、自動車保有の有無にかかわらず1戸あたり1台分以上の駐車スペースが割り当てられていることを指します。あわせて、駐車場代が家賃や共益費に含まれており、駐車場使用料等を別に徴収していないという条件にも当てはまる必要があります。
また、駐車場と定義されない更地を貸し出す場合も、非課税となります。舗装されていたり、駐車区画を設けたりすると課税対象となるため、青空駐車場として提供することがポイントです。

水道光熱費に関しては、家賃の対象から外れる生活費として取り扱われるので、原則的に課税対象となります。ただし、浴室・トイレ・キッチンといった設備が共用の社宅では、非課税扱いとなるケースもあります。従業員ごとの利用額を計算するのが難しいため、一般的な使用料に収まる範囲で企業が一律負担する場合は、非課税となるためです。この場合は福利厚生費として処理し、経費計上することも可能です。

社宅についての基本情報や、駐車場の扱いについてはこちらの記事でも紹介しています。ぜひご覧ください。
>>社宅とは?寮や住宅手当との違い、メリット・デメリットまで
>>借り上げ社宅の駐車場は経費にできる?その他の費用も解説

住宅手当を支給している場合の消費税の取り扱い

住宅手当と記されたブロック

企業が借り上げた社宅を貸し出すのではなく、従業員が自ら賃貸借契約や家賃の支払いを行う際に、一定額を「住宅手当」として支給する方法もあります。住宅手当は、家賃負担の取り扱いとはならず、従業員に対する給与の取り扱いとなることがポイントです。従業員への給与支払いは、消費税法において課税対象外取引であるため、住宅手当に対しても消費税は課されません。

ただし、住宅手当は給与所得に含まれるので、社会保険料や所得税等の負担が増えることに注意が必要です。一方、社宅制度の場合、従業員から一定額の家賃(賃貸料相当額の50%以上)を受け取っているときは給与所得とならず、社会保険料や所得税等の対象からも外れるため、企業と従業員の双方の負担が軽減されます。

社宅と住宅手当については、こちらで比較しています。ぜひご覧ください。
>>借り上げ社宅と住宅手当、企業が導入するならどちらがお得?

社宅にかかる消費税の仕訳処理方法

社宅にかかる消費税を仕分る人

ここからは、社宅にかかる消費税の仕分け処理をどのように行ったらいいのか、表を使いながらわかりやすく解説します。借上げ料や仲介手数料、敷金、礼金など項目ごとに紹介するので、ぜひ参考にしてください。

借上げ料

社宅の借上げ料は非課税の対象です。以下は、家賃6万円を支払うケースの仕訳例です。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
地代家賃 60,000円 現金 60,000円

上表のとおり、借上げ料の勘定科目は「地代家賃」と記載することが一般的です。貸方は、自社の支払い方法に応じて「現金」や「普通預金」の勘定科目を用います。

仲介手数料

不動産会社に物件を紹介してもらい、賃貸借契約を締結した際に発生する仲介手数料は、消費税の課税対象です。仲介手数料の上限は、宅地建物取引業法によって家賃1か月分と定められているため、相場は「賃料の0.5か月分~1か月分」です。これに別途、消費税が上乗せされます。

借上げ社宅の賃料が6万円で、仲介手数料が賃料の1か月分の場合は、10%の消費税である6,000円を加算して以下のように仕訳処理を行います。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
支払手数料 66,000円 現金 66,000円

仲介手数料は「支払手数料」の勘定科目を用いることが一般的です。なお、上表は消費税額を含めた税込経理方式の仕訳例となっています。

敷金、礼金

先述したように、返還されない敷金や、居住用として利用する場合の礼金は非課税の取り扱いとなります。一般に敷金・礼金の目安は、家賃の1~2か月分とされています。

まずは、敷金の仕訳処理方法を確認しましょう。敷金の勘定科目として、「敷金」または「差入保証金」を用います。以下は、家賃6万円の物件で敷金が家賃1か月分の場合の仕訳例です。

【敷金の仕訳処理例】
借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
敷金 60,000円 現金 60,000円

次に、礼金の仕訳処理の例を見ていきましょう。勘定科目は、礼金の額が20万円未満の場合は「地代家賃」もしくは「支払手数料」を使いますが、20万円以上の場合は「長期前払費用」を用います。
以下は、家賃6万円の物件で礼金が家賃2か月分の場合の仕訳例です。

【礼金の仕訳処理例】
借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
支払手数料 120,000円 現金 120,000円

従業員からの賃料を給与天引きした場合

前述のとおり、従業員から賃貸料相当額の50%以上の社宅の賃料を受け取る際は、非課税の扱いとなります。以下は、従業員の給与から家賃負担分の3万円の給与を天引きする場合の仕訳例です。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
給料手当 300,000円 普通預金 207,000円
預り金(所得税・住民税・社会保険料) 63,000円
受取家賃 30,000円

なお、上記の仕訳では、受取家賃を非課税売上の税区分で処理しています。

社宅費用が給与課税される場合

次に、社宅費用が給与課税される場合の仕訳処理を紹介します。以下は、社宅の家賃6万円に対して、従業員負担が1万円の場合の仕分け例です。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
給料手当 330,000円 普通預金 207,000円
預り金(所得税・住民税・社会保険料) 63,000円
受取家賃(※1) 10,000円
受取家賃(※1) 50,000円
※1)従業員負担分の家賃
※2)企業負担分の家賃

上記のうち、従業員から徴収する家賃は非課税売上の税区分で処理し、企業負担分の家賃は不課税売上として処理を行います。

社宅に関わる消費税の取り扱い方法を押さえよう

オフィスで人差し指を立てる若い女性

社宅に関わる消費税の取り扱いは、その項目ごとに課税・非課税の対象となるかが変わるため、正しく理解しておくことが重要です。たとえば、社有社宅として有償で従業員に貸し出す際の住居取得費は課税対象となりますが、法人として賃貸契約を結んで従業員に貸し出す場合の借上げ料は非課税となります。

企業が社宅制度を運用する際は、このような消費税に関する細かな確認のほかにも、送金管理や駐車場管理、引越し手配業務などさまざまな付随業務の負担があります。人事・総務担当者が担うこれらの業務負担を減らすために、社宅代行サービスの利用がおすすめです。

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まとめ

社宅に関する費用の消費税の取り扱いは、項目に応じて課税か非課税かが異なります。そのため、社宅にかかる費用を仕訳処理する際は、課税対象であるのかをしっかりと確認したうえで、内容に適した勘定科目や金額を記載する必要があります。

社宅運営では消費税以外にもさまざまな業務の負担が発生します。従業員の業務負担を軽減できる社宅代行サービスなども上手く活用して、税負担や業務コストの削減につなげましょう。

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