はじめに
福利厚生にかかるコストは少なくないため、節税方法を知りたいという総務・人事担当の方は多いのではないでしょうか。福利厚生費として扱える費用を把握することは、企業の税負担の軽減に役立ちます。
この記事では、福利厚生の概要を紹介したうえで、福利厚生費で節税できる仕組みや条件などを解説します。あわせて、福利厚生費に計上できないもの・計上できるもの、その他のメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
LIXILリアルティでは、社宅管理業務を手厚くサポートする社宅代行サービスを展開しております。これから社宅を導入しようとしている方も、すでに導入している方も、社宅管理についてのお困りごとがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
>>社宅管理について相談する
福利厚生とは
福利厚生とは、給与・賞与などの基本的な報酬とは別に、従業員に対して企業が提供する報酬やサービスを指します。具体例として、法律で導入・実施が義務付けられている雇用保険や労災保険、あるいは企業が任意で用意する社宅やリフレッシュ休暇などが挙げられます。
一部の福利厚生は、福利厚生費として経費計上が可能となるため、企業における節税効果が期待できるでしょう。まずは、福利厚生費の定義や交際費・消耗品費との違いについて紹介します。
福利厚生費とは
福利厚生費とは、福利厚生に要した費用のうち、税務会計上で経費計上できる費用を指します。福利厚生にかかった費用がすべて経費にできるわけではなく、福利厚生費に認められるのは特定の条件を満たした費用に限られるので留意が必要です。
また、福利厚生費は、「法定福利費」と「法定外福利費」の2種類に分けられます。法定福利費とは、法律で企業に設置が義務付けられている福利厚生にかかる費用のことです。具体的に、以下6つの費用が該当します。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
- 介護保険
- 子ども・子育て拠出金
一方、法定外福利費とは、企業が任意で運用する福利厚生にかかる費用を指します。多くの企業が導入している法定外福利費として、社宅や寮、あるいは通勤手当などの費用が挙げられます。
交際費・消耗品費との違い
福利厚生費と混同しやすい費用として、交際費・消耗品費が挙げられることが多いです。前述のとおり、福利厚生費は従業員に対して使う費用であるのに対し、交際費は取引先・得意先といった他社へ使うことに違いがあります。
また、消耗品費に計上できるのはオフィスの事務用品や日用品など、業務に直接関係のある品物の購入費用に限られています。一方、福利厚生費は業務に関係がなくとも、条件を満たしていれば計上が可能です。
福利厚生の種類や導入方法については以下の記事で詳しく解説しています。
>>福利厚生制度の種類や導入手順・サービス活用方法をわかりやすく紹介
福利厚生費で節税できる仕組み
福利厚生にかかる費用を福利厚生費に計上することで節税できる理由は、福利厚生費は経費としての損金算入が認められているためです。
そもそも企業に課される法人税は、以下のように計算されます。
【法人税の計算方法】
利益×法人税率=法人税
以下の計算式で示すように、利益は企業の売上から「損金算入額」を差し引いた額で算出されます。
【利益の計算方法】
売上-損金算入額=利益
損金とは、企業の資産を減少させる原価や費用、損失などを指します。福利厚生費は税法上、この損金として取り扱われるため、結果的に法人税の節税へとつながるのです。
福利厚生費が満たすべき条件
福利厚生にかかった費用を経費として扱うには、福利厚生費に計上するための以下3つの条件に当てはまっていなければなりません。
- 全従業員が利用できること
- 社会通念上、常識的な金額であること
- 現金支給でないこと
それぞれの条件について、以下で詳しく見ていきましょう。
全従業員が利用できること
福利厚生費に計上するには、企業が提供しているサービスを全従業員が平等に利用できる必要があります。たとえば、通勤手当をすべての従業員に支給している場合は、福利厚生費として認められます。
しかし、一部の従業員のみが利用できるサービスや、選考通過者のみが利用できるサービスなどを提供する場合は、福利厚生費として認められません。
社会通念上、常識的な金額であること
福利厚生費に認められる費用は、社会通念上、常識的な金額でなければなりません。たとえば、1年のうちに何度も宴会を開いたり、豪華な社員旅行を開催したりして、それらにかかった費用が常識的な金額といえない場合は福利厚生費として認められない可能性があります。
現金支給でないこと
従業員に対して現金を支給した場合は給与とみなされるため、福利厚生費に計上できません。福利厚生費にするには、現金支給ではなくサービスを提供しているという条件に当てはまっている必要があります。
また、現金支給に限らず、商品券を渡した場合も福利厚生費に計上できないので留意しておきましょう。
福利厚生費に計上できないもの
福利厚生費に計上できない福利厚生の具体例として、以下が挙げられます。
- 上限額以上の通勤手当
- 健康診断のオプション検査
- 条件を満たしていない社員旅行
- 住宅手当
福利厚生による節税効果を高めるためにも、福利厚生費に計上できないものをしっかりと把握しておきましょう。
上限額以上の通勤手当
通勤手当を支給する場合、一定額までは福利厚生費に計上できますが、上限額を超えると福利厚生費として認められないので注意しましょう。
たとえば、電車やバスなどの公共交通機関を使って通勤している従業員に、通勤手当を支給する場合の上限額は15万円です。15万円を超える通勤手当は、福利厚生費の対象外として扱われます。
健康診断のオプション検査
一般的な検査項目の健康診断や人間ドックの受診にかかった費用は福利厚生費として扱えるものの、高額な検査やオプションの検査項目は認められません。健康診断費用を福利厚生費にできるのは、あくまで常識的な金額に収まっている場合に限られます。
また、企業が健康診断費用を医療機関に支払うのではなく、従業員に現金で支給した場合も福利厚生費に計上できないので注意しておきましょう。
条件を満たしていない社員旅行
条件を満たしていない社員旅行にかかった費用は、福利厚生費として扱えない場合があるので気を付けましょう。福利厚生費に計上するには、以下3つの条件に当てはまっている必要があります。
- 全従業員が対象で、そのうち50%以上が参加していること
- 4泊5日以内の旅行であること
- 旅行に不参加の従業員に対する現金支給がないこと
上記3つの条件を満たさない社員旅行は、福利厚生費にできない可能性が高いといえます。
住宅手当
住宅手当は現金で支給されるため、福利厚生費として扱えません。また、企業が賃貸料相当額50%以上を負担する場合、社宅や寮の貸与にかかる費用も福利厚生費にできないので留意しておきましょう。
福利厚生における家賃補助(住宅手当)については、以下の記事で詳しく解説しています。
>>福利厚生として住宅手当を導入する前に知っておきたい7つの事
福利厚生費に計上できるおすすめの福利厚生
福利厚生費に計上することで企業に節税効果をもたらすうえ、従業員にとっても嬉しいおすすめの福利厚生として、以下の6つが挙げられます。
- 出張手当
- 慶弔見舞金
- 忘年会や新年会などの社内イベント
- 食事補助
- スポーツクラブ
- 社宅
ここでは、上記6つの福利厚生の内容を確認していきましょう。
出張手当
出張手当とは、従業員が通常の勤務地から離れた地域へ出張した際、従業員の費用負担をカバーしたり、出張に伴う肉体的・精神的な疲労をねぎらったりすることを目的に支給される手当です。
出張手当の上限額は設けられていないものの、社会通念上、適切な範囲内に収まる額である必要があります。また、企業が出張旅費規程を作成・保管していないと、経費計上が認められないおそれがあるので注意しましょう。
慶弔見舞金
慶弔見舞金は、従業員もしくはその家族の慶事・弔事や、被災時のお見舞いの際に支給されます。社内の規定に従って慶弔見舞金を支給した場合も福利厚生費に計上できます。
ただし、福利厚生費に計上するには、常識的な金額に収まっていなければなりません。たとえば、従業員の結婚・出産にお祝い金を支給する場合は、1~3万円が目安となります。
忘年会や新年会などの社内イベント
忘年会や新年会、歓送迎会といった社内イベントにかかった費用も、福利厚生費の対象となる場合があります。社内イベントにかかった費用を福利厚生費として計上する際は、以下のような条件に当てはまっていなければなりません。
- すべての従業員を対象としている
- 十分な人数が参加している
- 忘費用が常識的な金額である
たとえば、役職者のみで忘年会を開催したような場合は、福利厚生費に計上できないおそれがあります。
食事補助
昼食代や残業時の食事代などの食事補助を福利厚生費に計上するには、以下2つの条件を満たす必要があります。
- 従業員が半額を負担している
- 従業員へ現物支給している
なお、食事補助として認められる上限額は、1か月あたり3,500円以下とされていることにも留意しておきましょう。
スポーツクラブ
全従業員を対象にスポーツクラブの利用費を企業が負担する場合は、福利厚生費として取り扱えます。ただし、家族経営の企業や、スポーツクラブを利用する従業員が少ない企業は、福利厚生費にできない可能性があります。
社宅
企業が従業員のために住宅を貸与する社宅制度は、人気の高い福利厚生です。賃貸料相当額の50%以上を従業員が負担している場合は、社宅の賃料を福利厚生費に計上できます。
賃貸料相当額を計算するには、以下3つの計算式で算出した金額を合計します。
- 1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2パーセント
- 2. 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
- 3. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22パーセント
出典:国税庁「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」
従業員が負担する賃貸料相当額が50%を下回る場合は、福利厚生費として扱えないので気を付けましょう。
社宅の費用負担については、以下の記事で詳しく解説しています。
>>社宅の会社負担割合はどれくらい?節税効果を高める方法とは
福利厚生のメリットは節税だけではない
企業が福利厚生を導入するメリットは節税だけではありません。以下のようなメリットも見込まれます。
- 従業員満足度が向上する
- 企業のイメージアップになる
- 従業員の健康増進につながる
ここでは、福利厚生のメリットについて解説します。
従業員満足度が向上する
福利厚生が充実することによって従業員の満足度が向上し、モチベーションアップや優秀な人材の定着につながるメリットが見込まれます。たとえば、社宅制度を導入した場合、従業員の生活基盤が安定しやすくなるため、各個人がワークライフバランスの取れた働き方を実現しやすくなるでしょう。
結果として組織に対する愛着心が高まり、企業に貢献してくれる人材の定着率アップが期待できます。
企業のイメージアップになる
充実した福利厚生制度は、従業員を大切にしているという経営姿勢を対外的にアピールでき、企業の社会的なイメージアップに貢献できます。特に近年は、多くの求職者が福利厚生に大きな関心を寄せているため、良い企業イメージを印象付けることによって人材採用力の強化も図れるでしょう。
従業員の健康増進につながる
従業員が福利厚生を活用して心身ともにリフレッシュできれば、従業員の健康増進に加え、業務への集中度合いが高まることも期待できます。たとえば、スポーツクラブの福利厚生を導入した場合、始業前や終業後の時間を使って適度に体を動かせるので、メリハリをつけながら仕事に取り組んでもらえます。
福利厚生を充実させるメリットについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
>>福利厚生を充実させるメリット6選!トレンドやデメリット解消方法も
節税効果の高い福利厚生をお探しなら
より節税効果の高い福利厚生を導入したいなら、社宅制度がおすすめです。住宅関連の福利厚生には住宅手当もありますが、従業員に対する現金支給として扱われるので節税にはつながりません。さらに、住宅手当を含む金額で所得税や社会保険料が算出されるので、従業員の負担も増してしまいます。
一方、社宅制度の場合、従業員が賃貸料相当額の50%以上を負担していれば給与課税にならないだけでなく、福利厚生費としての計上も可能です。つまり、社宅制度は企業・従業員の双方にとって大きなメリットのある福利厚生といえます。
自社の業務負担を抑えて社宅制度を運用したいという方は、LIXILリアルティの社宅代行サービスを検討してみてはいかがでしょうか。当サービスでは経験豊富なスタッフが社宅業務の一元管理を行い、自社における業務負担を約8割も軽減できる効果が見込まれます。
社宅管理に関するお役立ち資料をご用意しております。ぜひ以下よりダウンロードしてみてください。
>>資料をダウンロードする
社宅のメリットについては以下の記事で詳しく解説しています。
>>社宅とは?寮や住宅手当との違い、メリット・デメリットまで
まとめ
福利厚生にかかった費用が一定の条件を満たす場合は、福利厚生費として計上できるため、法人税の節税効果があります。福利厚生費に計上できるものには、出張手当やスポーツクラブ、社宅制度などがあるので自社の制度を一度見直してみるのもおすすめです。
特に社宅制度は、高い節税効果が期待できる福利厚生です。要望に合わせて柔軟に対応してくれる社宅代行サービスを利用すれば、自社の負担を抑えて運用できるでしょう。