はじめに
福利厚生の一環として社宅を会社の従業員に提供する場合は、会社が負担する家賃を経費に計上できますが、全額を経費に計上できるわけではありません。従業員から賃料相当額以上の家賃を受け取っていれば、家賃との差額分を経費に計上できますが、社宅業務の担当者の中には、賃料相当額がいくらなのか分からずに困っている方も多いのではないでしょうか?
この記事では、会社の役員及び従業員に社宅などを貸した場合における賃料相当額の計算方法を国税庁が2020年4月時点で発表している計算方法をもとに解説します。賃料相当額の計算方法が分からずに困っている方は是非ご参考ください。
LIXILリアルティの社宅代行サービスは、これまで蓄積した社宅管理のノウハウを活かして、これから社宅を導入する方も、すでに社宅を導入している方にも安心してご利用いただける質の高いサービスを提供しています。社宅代行サービスについてのさらにくわしい情報は、ダウンロード資料をご覧ください。
>>資料をダウンロードする
役員社宅の種類
福利厚生の一環として社宅を従業員に提供した場合、会社が負担する家賃を経費に計上できます。そのため、役員にも社宅を提供することによって、少しでも多くの経費を計上しようと考えている会社も多いのではないでしょうか?
しかし、会社が経費に計上できるのは家賃の全額というわけではありません。賃料相当額を社宅の利用者から受け取っている場合のみ、家賃との差額分を経費に計上できます。
役員が負担する賃料相当額は、以下のように物件規模によって3つに分類されます。
- 小規模な住宅
- 小規模な住宅ではない場合
- 豪華住宅
規模によって異なる賃料相当額について詳しく見ていきましょう。
小規模な住宅
小規模な住宅に該当するかどうかは、法定耐用年数と床面積によって以下のように異なります。
法定耐用年数 | 小規模住宅の条件 |
---|---|
30年以下 | 床面積132㎡以下 |
30年超 | 床面積99㎡以下 |
法定耐用年数とは、法律に定められている建物の耐用年数のことです。建物の構造によって、法定耐用年数は以下のように異なります。
建物の構造 | 法定耐用年数 |
---|---|
鉄骨造(厚さ3mm以下) | 19年 |
木造 | 22年 |
鉄骨造(厚さ3mm超4mm以下) | 27年 |
鉄骨造(厚さ4mm超) | 34年 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
マンションといった区分所有建物の場合、廊下や階段などの共用部分の床面積を案分して居室(専有部分)の床面積に加えて計算します。
小規模な住宅でない場合
以下のように小規模な住宅の条件を満たしていない場合は、小規模な住宅とは異なる計算方法で賃料相当額を算出します。
法定耐用年数 | 小規模住宅の条件 |
---|---|
30年以下 | 床面積132㎡超 |
30年超 | 床面積99㎡超 |
豪華住宅 ※全額役員負担
小規模な住宅の条件を満たしていない社宅の賃料相当額は、全て同じ計算方法で求めるわけではありません。床面積が240㎡超の社宅は豪華住宅として扱われ、取得価格や支払賃料、内外装の状況等を総合的に勘案して賃料相当額を算出します。
240㎡超という条件を満たしていないケースでも、プールといった個人の嗜好が反映されているような社宅は、豪華住宅として扱われるという点に注意が必要です。
役員社宅の計算方法
役員の賃料相当額は社宅の法定耐用年数と床面積で3つに分類されることが分かりました。それぞれの社宅の賃料相当額の計算方法を詳しく見ていきましょう。国税庁が2020年4月時点で発表している計算方法をもとにご紹介していきます。
出典:「役員に社宅などを貸したとき|国税庁」
小規模な住宅の計算方法
小規模な住宅の賃料相当額は、以下の①~③の合計額です。
①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
②12円×(その建物の総床面積(㎡)/(3.3㎡))
③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
これらの計算に必要な情報は、固定資産税の納税通知書、不動産の売買契約書や不動産登記簿謄本、建築計画概要書などで確認できます。
小規模な住宅の計算の計算例
以下の条件の小規模な住宅を社宅として役員に提供したと考えます。
・建物の課税評価額が1,500万円
・敷地の総床面積が90㎡で法定耐用年数が30年超
・敷地の課税標準額800万円
・1ヶ月の家賃20万円
小規模な住宅の計算方法に上記の数値を代入した場合、
①1,500万円×0.2%=3万円
②12円×90㎡/3.3㎡=327円
③800万円×0.22%=1万7,600円
となり、賃料相当額は3つを合算した4万7,927円となります。
会社は役員から4万7,927円以上の家賃を受け取ることによって家賃の残りを経費に計上できる、役員は家賃20万円の物件に4万7,927円で入居できるため、双方にとってメリットがあります。
小規模な住宅でない場合の計算方法
社宅が小規模な住宅ではない場合における賃料相当額の計算方法は、社宅が自社所有または第三者の所有する賃貸住宅なのかによって異なります。建物の種類別の計算方法を詳しく見ていきましょう。
自社所有の社宅の場合
自社所有の社宅の賃料相当額は、以下の①と②の合計額の12分の1となります。
①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%
※ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合、12%でははく10%を乗じる
②(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%
賃貸住宅の場合
第三者の所有する賃貸住宅の賃料相当額は、以下の①と②の合計額の12分の1と③を比べて多かった方の金額です。
①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%
※ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合、12%でははく10%を乗じる
②(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%
③会社が家主に支払う家賃の50%の金額
小規模な住宅でない場合の計算例
以下の条件の小規模でない住宅を社宅として役員に提供したと考えます。
・建物の課税評価額が1,500万円
・敷地の総床面積が120㎡で法定耐用年数が30年超
・敷地の課税標準額800万円
・1ヶ月の家賃25万円
建物が社有社宅の場合、社有社宅の計算式に数値を代入すると、
①1,500万円×10%=150万円
②800万円×6%=48万円
となり、賃料相当額は2つを合算して12で割った16万5,000円となります。
一方、第三者の所有する賃貸住宅の場合、賃貸住宅の計算式に数値を代入すると、
③25万円×50%=12万5,000円
となり、①と②の合計を12で割った金額と③を比べて大きい方が採用されるので16万5,000円となります。
(例外)法定耐用年数が30年以下の場合の計算例
敷地の総床面積が120㎡で小規模住宅に該当していない住宅の場合でも、耐用年数が30年以下であれば小規模住宅に該当します。
先ほどの数値を小規模な住宅の計算方法に代入した場合、
①1,500万円×0.2%=3万円
②12円×120㎡/3.3㎡=436円
③800万円×0.22%=1万7,600円
となり、賃料相当額は3つを合算した4万8,036円となります。
小規模宅地に該当した方が賃料相当額を大幅に抑えられるでしょう。
従業員社宅の計算方法
住宅に対する福利厚生には、社宅を提供するという方法以外に住宅手当を支払うという方法が挙げられます。しかし、住宅手当を選んだ場合、住宅手当は給与として扱われるので所得税が課される、社会保険料の負担が大きくなるというデメリットが生じるので注意が必要です。
一方、社宅を選んだ場合、会社が家賃の一部を補助しても給与として扱われない、補助した家賃は損金として経費に計上できるため、双方にメリットがある福利厚生と言えます。
従業員社宅を導入するメリットについてはこちらの記事で詳しく説明しています。
>>借り上げ社宅はメリットがたくさん!導入のメリット・デメリット
従業員社宅の賃料相当額は固定資産税の課税評価額が分かる場合と分からない場合で異なります。それぞれの計算方法を詳しく見ていきましょう。 こちらも国税庁が2020年4月時点で発表している計算方法をもとにご紹介していきます。
出典:「使用人に社宅や寮などを貸したとき|国税庁」
固定資産税の課税標準額が分かる場合
固定資産税の課税評価額が分かる場合は、以下の①~③の合計額が賃料相当額となります。
①(その年度の建物の固定資産税の課税評価額)×0.2%
②12円×(その建物の総床面積(㎡)/(3.3㎡))
③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
固定資産税の課税標準額が分からない場合
固定資産税の課税標準額が分からない場合、支払家賃の半分以上を社宅家賃として受け取っていれば、残りの家賃を経費として計上できます。
社宅で節税する際の注意点
社宅は家賃から賃料相当額を引いた残額を経費として計上することによる節税効果が期待できますが、社宅で節税する際はいくつか注意点を押さえておかなくてはなりません。
最後に社宅で節税する際の注意点について詳しく見ていきましょう。
必ず一定額以上の家賃を受け取る
節税効果を高めるために、経費を多く計上しようと考えている方も多いと思いますが、経費に計上できるのは賃料相当額を引いた残額に限られています。
仕事に従事させる都合上やむを得ず会社の近くに住まなければならない看護師や守衛といった従業員に社宅を提供する場合、無償での貸与が認められる可能性があります。しかし、経費を計上するには原則賃料相当額を従業員から受け取らなくてはならないということを覚えておきましょう。
社宅管理規定の整備
社宅を従業員に提供する際、社宅を会社と従業員、社宅に住んでいる従業員同士、賃貸物件のオーナー、他の入居者などとトラブルが生じないように、ルールをしっかり定めなくてはなりません。
例えば、社宅の使用料と負担方法、入退去の手続き、規定違反があった場合の対処などです。これらの内容を盛り込んだ社宅管理規定を作成して、確認した旨の誓約書をもらっておけば、万が一のトラブルが生じても、責任の所在が誰にあるのか分かりやすくなるので問題をスムーズに解決しやすくなるでしょう。
社宅管理規定の作成方法についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
>>社宅管理規定を作成する7つのポイント!無料の雛形も公開!
家賃以外は本人負担
節税効果を高めるために、社宅利用に付随する駐車場代や水道光熱費、通信費などを経費に計上すればいいと考えている人もいるかもしれませんが、家賃以外は経費に計上できません。
家賃以外は本人負担となっており、会社がそれらを負担した場合は給与や役員報酬として課税対象となるので注意しましょう。
契約時の注意点
社有社宅ではなく、第三者の所有している賃貸物件を社宅として従業員に提供する場合、契約する際に敷金や手数料といった諸費用がかかります。また、法人を契約対象外としている物件もあるので注意が必要です。
事務所として契約すると、消費税の課税対象となってしまうため、消費税の課税対象とならない居住用として契約しましょう。
社宅の節税方法とその効果についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
>>社宅を経費とする節税方法について解説
まとめ
福利厚生の一環として、役員や従業員などに社宅を提供しようと考えている会社も多いと思いますが、家賃の全てを経費に計上できるわけではありません。役員や従業員などから賃料相当額を受け取って残った部分しか経費に計上できないので注意が必要です。
特に役員の場合、社宅の法定耐用年数と床面積によって賃料相当額の計算方法が異なるため、社宅業務を扱う担当者は賃料相当額の計算方法を把握しておく必要があります。
社宅の導入を検討している方は、賃料相当額の計算方法を把握するだけでなく、社宅で節税する際の注意点もしっかり把握しておきましょう。
LIXILリアルティでは、社宅管理担当者の負担をぐっと減らすのに役立つ、社宅代行サービスをご提供しています。社宅制度の導入や運用についてお困りの際は、お気軽にご相談ください。
>>社宅について相談する