はじめに
社宅の導入を検討している会社の担当者の中には、社宅の家具の購入費用を会社の経費として計上できるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。計上できない費用を計上した場合、税務署から指摘を受けてトラブルに発展することになるので注意が必要です。
この記事では、社宅の家具家電を経費として計上できるのか、そもそも会社が負担すべきものなのか、会社が貸し出すメリット・デメリットなどを解説します。社宅導入時の家具の扱いについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
社宅の家具家電は経費として計上出来る?
社宅は会社が従業員に住まいを提供して、家賃の一部を負担する福利厚生の1つです。従業員は固定費である住居費の負担を軽減することで手元に残るお金を増やせるため、住居関連の福利厚生は人気があります。
社宅を提供する際、あらかじめ社宅に家具家電が備わっているケースや会社が用意するケース、従業員が自ら用意するケースなどが挙げられますが、家具家電の購入費や修理費などを経費に計上できるのでしょうか。
家具家電の購入費や修理費などを計上できるかどうかは、状況によって異なります。社宅の家具家電を経費として計上できるのか、ケース別に詳しく見ていきましょう。なお、家具家電の税務上の扱いは複雑なので、専門家に相談することをおすすめします。
1.家具家電を従業員が購入した場合
会社が家具家電の費用を経費として計上できるのは、会社側が家具家電の費用を支出した場合です。しかし、家具家電を従業員が自ら購入して設置する場合、会社側は家具家電の費用を支出していません。
そのため、家具家電を従業員が購入した場合は原則、購入費を経費として計上することはできないでしょう。
2.借り上げ社宅で家具家電の備え付け物件を貸し出した場合
賃貸物件の中には、入居者募集を有利に進めるために、家具家電を備え付けた状態で貸し出しているケースも多いです。このようなケースでは、家具家電が住居と一体になっているかどうかによって扱いが異なります。
住居と一体となっている備え付けの家具家電は、家賃と区分せず扱っても問題ありません。しかし、別途後から備え付けられた家具家電は本来従業員が負担すべきもので、その分の価格は給与扱いにする必要があります。
備え付けられている家具の修理費やメンテナンス費用については、家具家電付き物件として提供しているので、原則貸主負担となります。ただし、契約書に別途記載がある場合は借主が負担しますが、費用は使用している従業員が負担すべきものと考えられるため、原則経費として計上できないでしょう。
3.自社所有の家具家電を貸し出した場合
会社が家具家電を購入して従業員に貸し出すケースも見られますが、本来は従業員が購入すべきものなので、従業員に対する経済的な利益の供与となります。つまり、その分の価格は給与扱いになるということです。
給与として扱われる価格は、貸し出された家具の時価総額を算出して、そこから定額法で計算した減価償却費相当額に家具類を維持・管理するために必要となる費用を加算して金額を見積もります。
家具家電の購入価格や維持管理費用については、会社の経費として計上できます。
参考:国税庁「社員に家具等を貸与した場合の経済的利益」
4.家具家電を会社がリースして貸し出した場合
会社が家具家電をリースして従業員に貸し出す場合も、自社所有の家具家電を従業員に貸し出した場合と同じ扱いです。本来は従業員が用意すべきものなので、従業員に対する経済的利益の供与となり、その分の価格は給与扱いになります。
給与として扱われる価格は、リース料相当額です。ただし、社宅を利用する従業員に家具類を貸与する経済的利益と社宅の賃貸料相当額の計算については別々に評価しなくてはなりません。
家具家電のリース料については、会社の経費として計上できます。
参考:国税庁「社員に家具等を貸与した場合の経済的利益」
そもそも社宅の家具家電は会社が負担するもの?
家具家電は、入居者が自ら用意しなくてはならないものです。そのため、一般的には家具家電の購入時にかかる費用は、従業員負担となります。
家具家電がセットになった物件を借り上げ社宅として提供する際も、従来は家具家電を切り離して給与として扱います。しかし、実務的にそれらを明確に切り離すことができない場合においては、非課税として扱われるケースもあるので判断が難しいところです。
家具家電が備わっている物件と従業員自らが家具家電を用意しなくてはならない物件が混在している場合は、不公平であるという理由から社内トラブルに発展する恐れがあります。社宅管理規定で家具家電をどのように扱うのか明確にすることが大切です。
社宅と家具家電を合わせて貸し出すメリット・デメリット
福利厚生の一環として社宅制度の導入を検討している会社の担当者の中には、社宅を提供する際に家具家電も貸し出すべきか悩んでいる方もいることでしょう。
しかし、一概にどちらが良いと言い切れるものではないため、貸し出すことによるメリット・デメリットを踏まえた上で判断することが大切です。
社宅と家具家電を合わせて、貸し出すメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
メリット
住宅関連の福利厚生として、社宅制度を導入する企業も少なくありません。そのため、社宅制度の導入だけで他の企業との差別化を図ることは容易ではなく、雇用を有利に進める、離職率を下げるといった効果はあまり期待できないでしょう。
しかし、家具家電が備わっている社宅を提供する場合には、従業員は自ら家具家電を揃える必要がないため、住居費にかかるコストを抑えられます。また、社宅への引っ越しの荷物を少なく抑えられるので、引っ越しの費用を抑えられる、引っ越し後すぐに快適な生活を送れるので、従業員の満足度の向上が期待できます。
社有社宅の場合は、稼働率を高められるほか、家賃設定を少し高めることによって不動産収入を増やす効果も期待できるでしょう。
デメリット
社宅に家具家電を備え付けるためには、ある程度の支出が生じます。購入費用やリース費用などを経費として計上できるといっても、費用負担が大きければ会社の収益を圧迫しかねません。
また、従業員の中には、個人の趣味嗜好に合わせた家具家電を用意したいと考えている方もいます。会社側が用意した家具家電を従業員が気に入るとは限らず、好意的に思わない方も一定数いることでしょう。退去後の社宅に残った家具家電は、基本的に使い回すことになります。人が使用していた家具や家電を使用することに抵抗感を抱く方もいるため、家具家電の設置が必ずしも魅力的とは言い切れません。
稼働率を高める目的で社有社宅に家具家電を設置したものの、反対に従業員に避けられる可能性もあります。一部の部屋は家具家電なしで従業員の意思を尊重するといったように、工夫することが求められるでしょう。
社宅に家具家電を備え付けるならレンタルという方法も
社宅に家具家電を備え付ける方法には、購入という選択以外に、リース・レンタルという選択肢もあります。家具家電を購入した場合は、壊れるか余程の劣化が進行しない限りは買い替えないため、古臭さが原因で従業員の不満が募る可能性が高いです。
しかし、リース・レンタルの場合、定期的に新しい家具家電に交換できることから、従業員の満足度の向上が期待できるでしょう。
リース・レンタル費用はどのような家具家電を設置するかで異なりますが、1ヶ月あたり30,000円程度です。複数年契約であれば、割引が適用されて1ヶ月あたり5,000円程度と安価に利用できる場合もあります。
必要に応じて契約・返却できるリース・レンタルは、利便性が高い契約方法ですが、長期的に見ればコストが割高である点に注意してください。短期の利用や利用数が少ない場合はリース・レンタルに向いていますが、長期の利用や利用数が多い場合は購入したほうが費用を抑えられる可能性もあるので、よく考えてから導入に移行しましょう。
社宅の家具家電を会社負担する場合の勘定科目
家具家電製品は固定資産として計上することもできますが、社宅で使用する家具家電製品については一般的に消耗品として扱います。そのため、家具家電製品自体を購入した場合は、家具備品費や備品費として扱いますが、会社が従業員に提供する福利厚生の一環として支給する場合は福利厚生費として計上します。
しかし、家具家電製品の勘定科目の扱いは、会社ごとに異なるので一概に言い切れません。会社ごとに方針や規則が異なる可能性があるため、社宅に関する経費の計上については会社の会計担当者や税務の専門家などに相談してから計上しましょう。
社宅業務の80%を削減「LIXILリアルティの社宅代行」
福利厚生の一環として社宅制度を導入する際は、以下のような業務が加わります。
- 社宅管理規定の作成・見直し
- 物件探し
- 賃貸借契約の締結・解約・更新
- 支払管理
- 敷金精算
- トラブル対応
従業員が日常業務に加えて上記の業務を担うことになった場合、業務過多による不満が募るほか、残業が増えることによって人件費がかさみます。新規に従業員を増やす場合にも、人件費の負担が大きくなるでしょう。また、社宅管理規定の内容や会計処理に問題があった場合、後で大きなトラブルに発展する恐れがあるので注意が必要です。しかし、これらの課題やトラブルは、社宅代行サービスを利用することで解決できます。
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社宅導入を検討している方、社宅管理に不安を抱いている方はお気軽にご相談ください。
まとめ
福利厚生を充実させることで、従業員の満足度を向上させることにつながります。そうすれば、他の企業との差別化を図ることで雇用を有利に進められるほか、離職率を低下させる効果も期待できるでしょう。
しかし、単に社宅制度を導入するだけでは、導入している企業も多いことから、差別化を図ることが容易ではありません。差別化を図るために、家具家電を備え付けた社宅を提供するのも選択肢の1つですが、必ずしも家具家電を備えることがプラスになるとは限らない点に注意してください。
従業員の中には、自身の趣味嗜好に合った家具家電を用意したいという方や、使い回された家具家電に嫌悪感を抱く方も少なくありません。家具家電を備え付ける場合のメリット・デメリットを踏まえながら、備え付けるべきかを総合的に判断しましょう。