はじめに
福利厚生の一環として借り上げ社宅の導入を検討している社宅担当者の中には、社宅費用を福利厚生費として計上するために条件があるのか気になっている人もいることでしょう。
条件を満たせず、福利厚生費として計上できなかった場合には、経費計上による節税効果が得られない可能性があるので注意が必要です。
この記事では、福利厚生費とは何かのほか、社宅を福利厚生費として計上できる条件などについて解説します。
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福利厚生費とは
福利厚生費とは、企業が従業員に対して支払う給与・賞与以外の報酬や費用などのことです。従業員の生活の安定や向上を目的として支給されます。
昨今は少子化による人口減少により、従業員の確保が困難になりつつあります。従業員を確保するにあたり、給与を増やすという選択肢もありますが、この選択はあまりおすすめできません。
その理由は、給与を増やすと所得税や社会保険料の負担が大きくなるためです。社会保険料は会社と従業員で折半であるため、従業員だけでなく会社の負担も増加します。
一方、福利厚生費の場合は給与として扱われないため、税負担を軽減できます。節税効果を得ながら従業員の雇用環境を向上させることで、新入社員の確保できるほか、従業員の離職を予防する効果が期待できるでしょう。
福利厚生費の2つの種類
福利厚生費として認められなかった場合は、経費として計上できなくなるほか、会社と従業員双方の税負担が大きくなる可能性があるので注意が必要です。
このようなトラブルを回避するためには、どのような報酬や費用が福利厚生費として認められるのか、事前に把握しておくことが大切です。
福利厚生費には「法定福利費」と「福利厚生費」の2種類あります。両者の違いや詳細について見ていきましょう。
法定福利費
法定福利費とは、健康保険法や労働基準法、厚生年金保険法といった各種法律・法令によって定められている福利厚生費のことです。具体的には、以下のような費用が該当します。
・健康保険
・厚生年金保険
・介護保険
・雇用保険
・労災保険
・子ども・子育て拠出金
健康保険、厚生年金保険、介護保険は労使折半となっており、会社と従業員が半分ずつ負担します。一方で、雇用保険は業種によって以下のように負担割合が変化します。
・一般の事業:従業員3分の1、会社3分の2
・農林水産・清酒製造の事業:従業員11分の4、会社11分の7
・建設業の事業:従業員3分の1、会社3分の2
労災保険と子ども・子育て拠出金は、100%会社負担となります。
福利厚生費
福利厚生費とは、法律によって支払いが義務付けられていない、会社の任意負担である福利厚生費のことです。そのため、法定外福利費とも呼ばれています。具体的には、以下のような費用が該当します。
・社宅手当
・交通手当
・出張手当
・慰安旅行の参加費用
・新年会や親睦会などにかかる支出
・残業時の食事代
・慶弔見舞金
・保養所や別荘利用費の補助
法定ではなく任意であるため、すべての会社に上記の福利厚生費が定められているわけではありません。また、負担割合も会社ごとに異なっている点に注意してください。
福利厚生費とそのほかの費用の違い
会社が支払う費用の中には、福利厚生費以外に消耗品費や交際費などが挙げられますが、これらの費用と福利厚生費にはどのような違いがあるのでしょうか。
福利厚生費とそれぞれの違いについて、詳しく解説していきます。
消耗品費との違い
消耗品費とは、定期的に使用されることで無くなる消耗性のある物品を購入する際にかかる費用です。
従業員が使用する備品を会社が購入して提供しているという構図になるため、福利厚生費になりそうですが、業務に関連する費用なので、福利厚生費にはなりません。
そのため、業務で使用するボールペンやクリップ、セロハンテープ、コピー用紙といった物品については、消耗品費として扱います。
交際費との違い
新年会や親睦会などにかかった支出は福利厚生費として扱うため、取引先などの社外の人たちとの飲食費も福利厚生費として扱うと考えている人もいるかもしれません。
しかし、従業員のための支出は福利厚生費として扱いますが、接待目的のための支出については交際費として扱うので注意が必要です。
上記のように、似たような支出であっても業務に関連するものなのか、従業員に対して支払われるものなのかで費用の扱いが異なるということを覚えておきましょう。
福利厚生の中でも人気が高い「住宅関連」
福利厚生費(法定外福利費)は会社が独自に定めることができますが、多くの企業が福利厚生費として取り入れているものにはどんな費用があるのか、気になる人も多いことでしょう。
一般社団法人日本経済団体連合会が公表した「第64回福利厚生費調査結果報告(2019年度)」によると、法定外福利費の平均2万4,125円に占める割合が最も大きかったのは、住宅関連費の1万1,639円(約48%)です。
住宅に関する補助には、住宅手当と社宅があります。住宅手当を上乗せした給与が支払われるため、従業員は持ち家の住宅ローン返済、賃貸物件の家賃負担を軽減できます。
住宅手当は住宅ローンや家賃などを自分で支払っている人を対象として均等に支払われるほか、利用できる物件に制限がいないため、公平性と自由度の高さが魅力です。しかし、住宅手当は給与として扱われるため、所得が増えることで従業員の所得税負担、会社と従業員の社会保険料負担が大きくなります。
社宅であれば、従業員は給与から家賃の差額分が引かれ、会社は社宅関連費用を経費として計上できるため、節税効果が得られます。
そのため、住宅関連の補助を検討している担当者は、住宅手当より社宅を選ぶ方が節税効果が高いと言えるでしょう。
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社宅の福利厚生費の相場とは
一般社団法人日本経済団体連合会が公表した「第64回福利厚生費調査結果報告(2019年度)」の住宅関連費を見ると、1人当たりの補助は1万1,639円でした。
仮に従業員1,000人規模の会社で、そのうち100人が社宅を利用していた場合、単純に100倍した116万3,900円が福利厚生費としてかかることになります。
福利厚生の一環として社宅を提供する場合は、どのくらいの経費が発生するのか理解しておきましょう。
社宅を福利厚生費として計上できる条件とは
福利厚生の一環として社宅の提供を検討している担当者の中には、会社の負担分を大きくすれば、より会社の魅力を高められると考えている人もかもしれません。
しかし、従業員から一定額の家賃(賃料相当額)を受け取っていなければ、給与として課税されるので注意が必要です。賃料相当額は、以下の3つの合計金額で算出できます。
・(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
・12円×(その建物の総床面積(㎡)/3.3㎡)
・(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
参照:国税庁「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」
例えば、賃料相当額5万円の場合、無償で貸与すると5万円全額、2万円を従業員が負担すると残りの3万円が課税対象となります。賃料相当額の50%以上である3万円を負担した場合は、差額の2万円は課税されません。
上記のような節税効果が期待できることから、社宅の家賃は周辺の賃料の半分以下、特に10~20%の範囲が、従業員が負担する家賃の相場と言われています。
社宅の福利厚生費は課税・非課税?
社宅の福利厚生費が課税されるのかどうか、気になっている担当者もいることでしょう。誤った経理処理は後でトラブルに発展する可能性があるため、扱いを十分に理解しておく必要があります。
社宅を含む福利厚生費の扱いについて詳しく見ていきましょう。
社宅は基本的には非課税
社宅は、従業員から賃料相当額以上を受け取っていれば、給与として課税されません。つまり、基本的に社宅に関連する費用は、非課税ということです。
しかし、以下のようなケースに該当する場合は、課税対象となります。
・従業員に無償で社宅を提供する
・従業員から賃料相当額よりも低い家賃を受け取っている
・現金支給の住宅手当や入居者が直接契約している物件の家賃負担
上記に該当する場合は課税対象となり、税金を納めなくてはならないので注意が必要です。
社宅以外で福利厚生費が非課税対象になるもの
社宅以外の福利厚生費も原則非課税です。ただし、以下の条件を満たしていなくてはなりません。
・福利厚生の目的に沿っていること
・全従業員を対象とする平等な内容であること
・内容が常識の範囲内であること
・金額が妥当であること
・規定の範囲内の支出であること
上記に該当する交通手当や出張手当、慰安旅行の参加費用、新年会や親睦会などにかかる支出などについては、基本的に非課税となります。
福利厚生費が課税対象になるもの
福利厚生費であっても、先ほどの条件に該当していない場合は課税対象となるので注意が必要です。
例えば、通勤手当が1ヶ月当たり15万円を超えている、企業が負担する社宅や寮の家賃が賃料相当額の50%を超えている、研修旅行や社員旅行に一部の従業員のみが参加する場合などです。
福利厚生として常識の範囲を超えている、公平性に欠けていると考えられるため、給与扱いによる課税対象となるので覚えておきましょう。
社宅の福利厚生費の計上方法と注意点
福利厚生費は、適切に計上しなければ節税効果を得られないだけでなく、後でトラブルの原因となるため、正しい知識を身に付けておく必要があります。
社宅の福利厚生費の計上方法と注意点を詳しく見ていきましょう。
仕訳
福利厚生費を損益計算書で仕訳する場合は、販売費および一般管理費という費用になります。従業員の給与、消耗品費、会議費や交際費などもあるため、混同しないように気を付けなくてはなりません。
社宅の福利厚生費を仕訳する際は、一定条件を満たしていれば福利厚生費として計上します。しかし、条件を満たしていない場合は、福利厚生費ではなく従業員の給与として仕訳することになるので、注意が必要です。
勘定項目
福利厚生費は、法定福利費と福利厚生費に分類されます。社宅に関連する費用は福利厚生費(法定外福利費)に分類されるため、間違えないようにしましょう。
また、福利厚生費に該当する支出は多く、福利厚生費のままでは何に関連する費用なのかが分からないため、「住居費用」や「慶弔見舞金」のように分かりやすい勘定項目を使用しましょう。
計上方法
社宅の福利厚生費を計上する際は、経理の担当者が変更になった場合でもミスが生じにくいように、一般的な勘定項目を使用することが大切です。
また、企業会計規則には「継続性の原則」というルールがあり、担当者や会計ソフトが変わったからといって勘定項目を変えないように気を付けましょう。
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社宅を福利厚生の一環として提供する際、社宅管理業務の担当者は、以下のような業務を担うことになります。
・物件の手配
・契約・更新・解約手続き
・賃料などの支払い
・帳票の作成
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年間を通して業務が均等というわけではなく従業員の入れ替わりが多い4月や9月に業務が集中するため、担当者の負担が大きく、ミスが生じやすくなります。そこでおすすめするのが、社宅管理代行サービスです。
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まとめ
従業員の満足度を向上させることは、従業員の確保や離職を阻止する上で不可欠です。従業員の給与を増やせば満足度の向上を期待できますが、従業員は所得税の増加、従業員・会社ともに社会保険料の負担増となるため、多方面から満足度を向上させる方法を考える必要があります。
福利厚生を充実させることは、従業員の満足度を向上させるほか、場合によっては節税効果も期待できます。社宅の導入は、住居費用を抑えられるだけでなく、家賃負担分は給与から引かれるため、所得税の節税効果も得られます。
しかし、正しい知識を身に付けてから社宅制度を導入しなければ、社宅制度が給与として扱われ、課税対象となってしまう点に注意が必要です。
社宅管理業務の負担を軽減したい、専門家のサポートを受けてトラブルを回避したいという方は、社宅代行サービスを導入するのも選択肢の1つと言えるでしょう。