はじめに
マイナンバー制度とは、行政の効率化や国民の利便性向上、公平・公正な社会の実現のための社会基盤です。法人契約の社宅では、支払調書を作成する際に大家さんのマイナンバーが必要です。
新卒で採用された、部署異動で今年初めて社宅担当になったという方のなかには、社宅に関する知識が少なく、マイナンバー手続きに不安を抱いている方もいると思います。
この記事では、社宅とマイナンバーについてわかりやすく解説します。
法人契約の社宅には大家さんのマイナンバーが必要
不動産賃貸や不動産売却といった一部の不動産取引では、大家さんのマイナンバーが必要になります。すべての不動産取引で必要というわけではなく、不動産賃貸では貸主が個人、借主が法人(不動産業者を含む)場合に限られます。
一般的な不動産賃貸では、借主が個人であることがほとんどで、大家さんのマイナンバーが必要になることは基本的にありません。
大家さんのマイナンバーが必要になるのは、法人契約の社宅のように借主が法人の場合、年間の家賃や地代の合計金額が15万円超える場合に限られているため、特別なケースといえるでしょう。
大家さんのマイナンバーは支払調書に必須
大家さんのマイナンバーは、支払調書を作成する際に使用します。支払調書とは、法人や個人に対して「誰に、どのような内容で、年間いくら支払ったのか」を税務署に報告するための書類です。
社宅でいえば、年間の支払総額が15万円を超える場合に「大家さんに対していくらの賃料を支払ったのか」を、支払調書を通して税務署に報告します。
マイナンバーを教えてもらう目的
支払調書の作成に大家さんのマイナンバーが必要であることはわかったものの、税務署は収集した大家さんのマイナンバーを何に使用するのでしょうか。
税務署は、法人から提出された支払調書とオーナーの確定申告書の内容が合致しているかを確認します。納税の不備を発見しやすくすることによって、不正を防ぐことが目的として挙げられます。
2017(平成29)年の1月から、支払調書へのマイナンバーの記載が義務化されているため、忘れずに記載しましょう。
大家さんからマイナンバーを収集する方法
大家さんからマイナンバーを収集する方法として、以下の3つが挙げられます。
- 管理会社経由で収集する
- 専門業者に依頼して収集する
- 自分で収集する
各収集方法を詳しく解説していきます。
管理会社経由で収集する
賃貸経営を行っている大家さんは、自ら賃貸物件を管理する自主管理ではなく、管理会社に委託する委託管理を選択していることがほとんどです。
委託管理では、窓口が大家さんではなく管理会社となるため、大家さんのマイナンバーを収集したい場合には管理会社経由で行うことになります。
しかし、管理会社が必ず対応してくれるわけではありません。対応してくれない場合には、残りの2つの方法を選択することになります。
専門業者に依頼して収集する
マイナンバーは個人情報保護の観点から、収集や保管には厳格な安全措置が求められます。厳格な安全管理の実現には社員教育や設備投資などにコストがかかるため、マイナンバーの収集や保管、運用を行う企業では、マイナンバーに関する業務を外部委託するケースが多いです。
専門業者に依頼して収集したマイナンバーで支払調書を作成しますが、外部委託の際もコストはかかるため、自社で情報管理を行う場合と比べてどちらが良いのか、よく考えてから依頼しましょう。
自分で収集する
大家さんのマイナンバーを自分で収集する場合、郵送でお願いする方法と直接対面でお願いする方法に大きく分かれます。
しかし、マイナンバーは重要な個人情報であるため、大家さんのなかにはマイナンバーの収集を拒む人も少なくありません。そのため、マイナンバーの収集確率を高めるために、直接対面でお願いに行くケースも多いです。
自分で大家さんのマイナンバーを収集した場合は、適切に管理できていなければ将来的にトラブルに発展する恐れがあるため、社員教育や設備投資などを徹底しましょう。
大家さんに提出してもらう書類と提出依頼方法
大家さんに必要な資料が何なのかを明確に伝えなければ、以下のように希望とは異なる情報を提供してしまう可能性があるので、注意が必要です。
- マイナンバーの書かれたメモ
- マイナンバーカードの番号の書かれた部分のコピー
- 通知カードのコピー
上記のような情報だけでは、本人確認を完全には行えません。なぜなら、本人確認にはマイナンバーと身元の確認が必要だからです。
大家さんにマイナンバーを提供してもらう際に、どのような書類が必要なのかを詳しく見ていきましょう。
大家さんに提供してもらうもの
大家さんに提供してもらうものとして、以下の書類が挙げられます。
・マイナンバーカードの写し
・通知カードの写し
・マイナンバーが印字された住民票の原本
・運転免許証、パスポートなどの写し
大家さんからは、番号確認と本人確認ができる書類を提供してもらう必要があります。マイナンバーカードの写しには番号と顔写真があり、番号確認と本人確認の両方を行えるため、1枚提供してもらえば十分です。
しかし、通知カードやマイナンバーカードが印字された住民票の原本には、顔写真がありません。そのため、これらの書類を提供してもらう場合は、運転免許証やパスポートなどの写しも必要になります。
大家さんが運転免許証やパスポートを持っていない場合は、以下の書類を代用にすることも可能です。
・公共料金や各種税金などの領収書
・被保険者証
・児童扶養手当(特別児童扶養手当)証書
・年金手帳
上記書類のうち、2枚を組み合わせて本人確認を行います。
水道料金や電気料金などの領収書や被保険者証、年金手帳などは基本的に誰でも持っているので、大家さんに理由を説明して提供してもらいましょう。
マイナンバー提供依頼をする際に必要な書類
大家さんにマイナンバーの提供を依頼する際は、応じてもらいやすくしたり、不備がないようにしたりするためにも、事前準備をしっかり整えてから依頼することが大切です。
依頼する際に必要な書類には、「公益財団法人日本賃貸住宅管理協会」の提供する「マイナンバー提供依頼の周知チラシ」や「マイナンバーご提供のお願い」などがあります。
これらの書類を用意しておけば、マイナンバーを提供しなければならない旨が大家さんにも伝わりやすいため、応じてもらえる可能性が高まります。
また、大家さんが遠方にいるといった理由から郵送でマイナンバーを提供してもらうケースでは、大家さんが郵送しやすいように、確認書類の写しを貼り付ける台紙や切手を貼った返信用封筒を同封しておきましょう。
マイナンバーを収集する時期
大家さんにマイナンバーを提供してもらうにあたり、支払調書の提出期限から逆算して期限に間に合うように依頼すれば良いと考えている人もいると思います。
しかし、大家さんが提供するのを忘れていた、担当者が依頼を忘れていたなどの理由で、期限に間に合わない可能性もあるので注意してください。
確実にマイナンバーを期日までに収集するためには、取引開始(賃貸借契約の締結)と同時にマイナンバーを収集しておくことをおすすめします。
しかし、年間の支払総額が15万円以下の場合は、大家さんのマイナンバーは不要です。不必要にマイナンバーを収集することは認められていないため、提出対象になるか不確実な場合には、マイナンバーを収集するものの不要であった場合には破棄するという旨をあらかじめ伝えておきましょう。
マイナンバーの保管と破棄の方法
大家さんのマイナンバーは支払調書作成を行うために必要なので、収集や保管が認められています。保管の際は専用区画を設ける、鍵のかかるキャビネットに保管するなど、物理的なアクセスを制限・監視する措置をとる必要があります。
収集したマイナンバーはいつまでも保管しても良いというものではなく、利用する必要がなくなった場合には、速やかに削除または廃棄しなくてはなりません。
保管方法がデジタルデータの場合、専用のソフトウェアや物理的な破壊方法によって復元不可能な状態にする必要があります。紙書類の場合、シュレッダーや焼却によって破棄します。
マイナンバーを削除または廃棄した後は、その旨を記録として残さなくてはなりません。書類の内容、部数、担当者、削除方法などを残しておきましょう。
大家さんにマイナンバーを提出してもらうのは難しい
支払調書の作成時に必要な大家さんのマイナンバーですが、大家さんから提供してもらえるとは限りません。その理由として、以下の3つの理由が挙げられます。
- そもそも教える義務はない
- 詐欺への警戒
- 個人情報漏洩の懸念
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
そもそも教える義務はない
借りた側には、大家さんのマイナンバーを記載した支払調書の提出義務があるため、大家さんがマイナンバーを提供してくれない場合には、大家さんに何らかの罰則が適用されると考えている人もいると思います。しかし、大家さんにはマイナンバーの提出義務はなく、罰則規定もないので、拒否することも可能です。
義務化されていればマイナンバー提供に応じてもらえますが、義務化されていない以上、次の見出しのような理由から拒否されてしまうことも多いので、注意しましょう。
詐欺への警戒
マイナンバー制度が導入されてから、マイナンバー制度に便乗した詐欺が多発しています。例えば、マイナンバーの情報が洩れているので個人情報を削除するために、クレジットカードの情報が必要なので教えてほしいといった手口です。
他にも、マイナンバーと個人情報を結びつけるために、銀行口座やクレジットカードの情報を教えてほしいと迫る手口もあります。
上記のようなマイナンバー制度に便乗した詐欺が多発している背景もあり、マイナンバーの取り扱いに対して慎重になっている人が増えているため、いくら必要でも教えてもらえない可能性があります。
支払調書の作成に必要である旨を説明し、警戒を解いてもらう必要があるでしょう。
個人情報漏洩の懸念
マイナンバー提供後の個人情報の漏洩を心配している人も多いです。マイナンバーカードには、氏名と住所、顔写真、生年月日、性別、カードの有効期限、臓器提供の意思、番号などが記載されています。
銀行口座に関する情報やクレジットカードに関する情報は記載されていないため、情報漏洩しても直接的なトラブルに巻き込まれることは基本的にありません。しかし、詐欺グループの手に渡った場合は、個人情報を利用した犯罪に巻き込まれる恐れがあります。
上記のように、個人情報漏洩を懸念してマイナンバーを提供してもらえない場合は、個人情報を扱う自社または外部委託先のセキュリティが万全である旨を説明し、懸念を払拭してもらう必要があるでしょう。
マイナンバーを提出してもらえない場合は経緯記録が必要
支払調書に大家さんのマイナンバーを記載することは必須ではありませんが、原則的にマイナンバーの記載は法定の義務です。そのため、空欄のまま税務署に書類を提出することは好ましい選択とは言えません。
大家さんから提供を受けられなかった場合は、単なる義務違反でないことを明確にするために、提供を求めた経緯を記録・保管することを国税庁も推奨しています。(2022年7月時点)
参照:国税庁「法定調書に関するFAQ」
マイナンバーを収集できなかった際の支払調書の書き方
マイナンバーを記載すべき支払調書に記載がなかった場合は、法定記載事項を満たしていません。そのため、税務署から記載がない理由を確認する場合があります。
その際に、マイナンバーの取得の経緯を聞かれるため、「いつ提供を求め、結果として提供を受けられなかった事実」を残しておくことが大切です。マイナンバーの部分が空欄でも受け付けてもらえますが、単なる義務違反でないことを明確にするためにも、経緯記録を作成しておきましょう。
参照:国税庁「法定調書に関するFAQ」
社宅代行サービスで社宅管理業務を軽減
社宅管理業務は、従業員の入れ替わりが多い4月と9月に業務が集中します。そのため、専門部署を設けている企業は少なく、他の部署が兼任していることが多いです。
しかし、このような状況では、兼任する部署の負担が大きくなったり、専任ではないため社宅管理業務に何らかの支障が生じたりする可能性が高まります。そこでおすすめするのが、社宅代行サービスの利用です。
社宅代行サービスを利用すれば、社宅管理業務の負担を大幅に軽減できるほか、大家さんからマイナンバーを収集する手間やマイナンバーの管理にかかるリスクも軽減できるでしょう。
LIXILリアルティの社宅代行サービスなら社宅管理業務の80%を削減可能
LIXILリアルティの社宅代行サービスは、「企業側の立場にたった社宅代行」をコンセプトとしています。社宅業務を一元化することによって高い業務品質を享受するほか、マイナンバーの収集を含む高品質で豊富なサービスを提供しており、社宅管理業務の80%を削減することが可能です。
自社で社宅管理業務を行う場合と比較して大幅なコストダウンを実現できるため、社宅管理業務に悩んでいる企業または社宅担当者の方は是非一度ご検討ください。
まとめ
法人契約の社宅では、支払調書の作成時に大家さんのマイナンバーが必要なので、提出期限までに大家さんのマイナンバーを取得しなくてはなりません。
しかし、大家さんのなかには、詐欺への警戒や個人情報漏洩の懸念などの理由から、提供に応じてくれない人も一定数います。支払調書はマイナンバーを記載しなくても提出することは可能ですが、法定記載事項を満たしていないため、税務署から問い合わせの連絡が入る可能性があります。
トラブルを回避するために、マイナンバーを収集するコツや収集できなかった場合の対処法などをあらかじめ把握しておきましょう。