はじめに
借り上げ社宅に入居期限を設けて、管理の適正化を図っている企業は少なくありません。社宅は従業員が平等に利用できる福利厚生制度であることから、入居期限を設けることで公平性を保てるほか、担当者が利用状況を把握しやすくなるメリットもあります。一方で、入居期限を設定するデメリットや注意点もあるため、事前にしっかりと把握しておくことが大切です。
今回は、借り上げ社宅における入居期限の概要を紹介したうえで、入居期限を設けるメリット・デメリットや注意点などを詳しく解説します。入居期限に関する知識を深め、社宅制度の運用に役立てたい方は、ぜひ参考にしてください。
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借り上げ社宅における「入居期限」とは
まずは、借り上げ社宅の入居期限の概要と、平均の入居期限について見ていきましょう。
従業員が社宅に居住できる期間のこと
借り上げ社宅における「入居期限」とは、社宅として借りている住宅に従業員が居住できる期間のことを指します。入居期限が設けられていないと長期間同じ従業員が居住するリスクがあり、福利厚生制度の平等性に欠けるため、社宅制度を導入している企業では入居期限を設けることが一般的です。
なお、借り上げ社宅の入居期限は、基本的に企業が自由に設定できます。ただし、従業員のニーズに応えつつ不要なトラブルを回避するには、いくつかの点に留意する必要があります。詳細は後述するので、ぜひご確認ください。
社宅の概要については別の記事でもご紹介しています。詳しく知りたい方はこちらも併せてご覧ください。
>>社宅とは?寮や住宅手当との違い、メリット・デメリットまで
借り上げ社宅の平均入居期限は「10.4年」
続いて、借り上げ社宅の平均入居期限に注目してみましょう。株式会社労務研究所が実施した「2023年度版 社宅・独身寮の使用料調べ」によると、社宅の平均入居期限は10.4年となっています。
入居期限あり | 入居期限なし | |
---|---|---|
66.1% | 33.9% | |
平均入居期限 | 10.4年 | - |
平均退去年齢 | 43.1歳 | - |
また、借り上げ社宅を導入している企業のうち66.1%が入居期限を設けており、平均退去年齢は43.1歳となっています。
なお、入居期限の設定方法は企業ごとに異なりますが、「入居期間」で制限する方式が主流です。この手法は、特に転勤者向けの社宅を提供する企業で多く採用されており、企業は転勤者に対して一定の期間社宅を提供することで、転勤者の居住状況を効率的に管理しています。
ほかの入居制限を設けているケースもある
企業によっては、入居期限だけでなく、以下のような制限を設けているケースもあります。
- 入居対象者の限定
- 年齢の制限
- 役職の制限
入居対象者の限定とは、従業員の入居理由や属性などによって対象者を絞り込む制限のことです。具体的には、借り上げ社宅の入居対象者を転勤者と新規採用者に限定したり、独身・単身の従業員に限定したりする場合が該当します。
また、特定の年齢までの従業員のみが入居できるように、年齢の制限を設けている企業も少なくありません。理由は様々ですが、なかには持ち家の購入を促進する一環として年齢制限を設定している企業もみられます。
なお、採用している企業は少ないものの、従業員の役職に応じて借り上げ社宅の入居制限を設けているケースもあります。ただし、特定の役職者のみに社宅利用を優遇すると不平等性が高まることから、合理的な基準を設けることが重要です。
借り上げ社宅に入居期限を設けるメリット
次に、借り上げ社宅に入居期限を設ける主なメリットを3つ紹介します。自社の借り上げ社宅で入居期限を設けるべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
1. 社宅の公平性を保てる
借り上げ社宅に入居期限を設けることで、同じ従業員が長期間にわたって居住することを防ぎ、社宅制度における公平性を保てるメリットがあります。そもそも社宅は、従業員が比較的安い家賃で暮らしたり、物件選定・契約手続きの手間を減らしたりできる大変人気の高い制度です。
特に、新入社員などの若手人材は福利厚生を重視する傾向にあるため、一定の入居期限を設定し、従業員が社宅制度を利用する機会を均等にすることは重要といえます。
2. 社宅の利用状況を把握しやすくなる
入居期限を設けることにより、社宅制度を利用している従業員数や需要の変化などを把握しやすくなり、管理に活かせることも大きなメリットです。入居期限があれば、従業員が社宅から退去するスケジュールと、新入社員などが入居するスケジュールを調整しやすくなり、社宅利用者を適切に管理できます。
また、社宅利用の需要が増加している場合は、自社のニーズに適した新たな物件を早めに探し、契約しておくことで従業員へのスムーズな提供が可能です。地域によっては社宅向けの物件探しが難航するケースもあるため、利用状況に応じて計画的に物件を確保することが大切です。
3. 維持・管理に必要なコストを抑えられる
入居期限を設けることは、借り上げ社宅の維持・管理に関連するコストの削減にもつながります。というのも、入居者が長期間同じ物件に住んでいると劣化や損傷などが見過ごされる可能性がありますが、短期間での更新であれば物件の状態を確認する機会が増え、必要なメンテナンスを定期的に実施することが可能です。その結果、大規模な修繕の発生を抑えられ、維持・管理コストの大幅な抑制を期待できます。
借り上げ社宅に入居期限を設けるデメリット
借り上げ社宅に入居期限を設けることにはメリットがある一方、以下の2つのデメリットも存在します。良い面だけでなく懸念点も把握しておくことで、自社が入居期限を設定すべきか否かを判断しやすくなるでしょう。
従業員が不満を感じる場合もある
借り上げ社宅に入居期限が設けられている場合、従業員はその期限までに新しい住居へ転居しなければなりません。特に、小さな子どもがいる家庭においては「長く社宅に住み続けたい」と考えるケースが多く、住宅の移動が大きなストレスとなる可能性があります。
従業員の不満を軽減するためには、周辺エリアに精通した不動産会社の情報を提供したり、退去時のサポート体制を強化したりする対策が有効です。なお、自社の管理体制や社宅物件の所有状況などにもよりますが、法人名義から個人名義に変更して同じ物件に住み続けることを提案する選択肢もあります。
管理の負担が増える
入居期限を迎えるたびに、更新手続きや成約に関わるあらゆる事務作業が発生するため、自社の労務負担が増えることも懸念点のひとつです。
ただし、社宅管理を外部サービスに委託する場合は、このデメリットを解消できます。更新時の契約手続きはもちろん、引越手配などの付随業務や毎月の賃料送金なども任せられるケースが多いことから、自社の従業員の負担を減らし、コア業務に取り組む環境を整備できるでしょう。
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借り上げ社宅の入居期限を設定する際の注意点
ここからは、借り上げ社宅の入居期限を設定する際の注意点を5つ解説します。事前にしっかりとチェックして、社宅制度の適切な運用を目指しましょう。
1. 従業員のニーズや意見を参考にして設定する
借り上げ社宅の入居期限を設定する際には、従業員のニーズや意見を参考にすることが大切です。たとえば、ファミリー世帯は長期入居を望む場合が多いとされているため、ファミリー世帯の従業員が多い企業の場合は入居期限を厳しく設定しないように配慮するとよいでしょう。
このように従業員の世帯構成なども踏まえて入居期限を設定することで、従業員満足度の向上につながりやすくなります。満足度を高めることにより、従業員の定着率がアップし、採用や人材育成にかけるコストを抑える効果も期待できるでしょう。
2. 期限満了後の退去・延長手続きに関するルールも定める
入居期限を設ける際は、そのルールやポリシーについて従業員へ明確に伝えることが不可欠です。特に、期限が満了した際の退去手続きや、延長を希望する場合の申請方法に関する情報をしっかりと周知することで、従業員が社宅制度に対する不満を抱きづらくなります。
3. 個人契約への切り替え可否についても明確にする
企業の社宅担当者は、社宅物件の賃貸借契約を法人契約から個人契約へ切り替え可能かどうかを事前に検討しておき、契約書や社内規定などに明記することも重要です。
社宅規程には、個人契約への切り替えが可能かどうかや具体的な条件について明確に定めておく必要があります。なかには入居期限満了後に個人契約で住み続けることを希望するケースや、退職するなどの理由で企業との雇用契約が終了しても同じ物件に住み続けることを希望するケースもあるためです。
なお、個人契約への切り替えにおいては貸主の了承が必要であり、そのための入居審査も行われます。また、名義変更にあたっては企業の担当者・従業員・貸主の間で複数回にわたるやり取りが発生するため、期間に余裕をもって進めるとよいでしょう。さらに、原状回復費用の負担や敷金・礼金などに関してもあらかじめ貸主にしっかりと確認し、従業員からの理解を得ておくことも重要です。
個人契約への変更については別の記事でもご紹介しています。詳しく知りたい方はこちらも併せてご覧ください。
>>借り上げ社宅を個人契約に変更する手順や注意点。社名変更との違いも
4. 定期的な見直しを図る
入居期限を定期的に見直すことは、社宅制度の円滑な運用において必要不可欠です。先述した株式会社労務研究所の調査結果などをチェックして最新の動向を参考にしたり、従業員アンケートなどでニーズをキャッチしたりしながら、必要に応じて入居期限の変更を検討するとよいでしょう。
また、入居期限だけでなく入居条件や家賃なども定期的に見直すことで、従業員が利用しやすい社宅制度の運用につながり、結果として定着率の向上にも寄与するでしょう。
5. 専門家からアドバイスを得る
社宅の入居期限を定める際は、不当に従業員の権利を制限したり、差別的な対応をしたりすることのないように、専門家からアドバイスをもらうことが重要です。たとえば入居期限における特定の条件(年齢・家族構成など)を設定する場合、条件の内容によっては差別的であるとされ、法律に抵触する恐れがあります。
こうした不要なトラブルを避けるため、ぜひ企業法務や弁護士といった専門家からのアドバイスを得ながら社宅制度に関する設定・運用を行うとよいでしょう。
「社宅代行サービス」を利用するのも一手
ここまで解説したとおり、借り上げ社宅の入居期限を設定する際には様々な注意点があるほか、労務リスクも伴うため、社宅代行サービスを利用するのもひとつの方法です。
以下では、社宅代行サービスの概要について詳しくまとめました。自社における社宅運営の負担軽減を図りたい方は、ぜひチェックしてください。
社宅代行サービスとは
社宅代行サービスとは、物件探しや契約・解約、支払い管理など、一連の社宅管理業務を外部業者に委託できるサービスのことです。一般的に、社宅管理業務は総務部や人事部の担当者が行いますが、近年は業務効率化などを目的としてアウトソーシングする企業が増加傾向にあります。
社宅代行サービスを利用することで、企業担当者の管理負担が減り、コア業務に注力できたり、ワークライフバランスの整った働き方を実現できたりするメリットがあります。また、社宅代行サービスでは専門知識を備えたスタッフが対応するため、原状回復費用の適正化や、賃貸借契約におけるリスク軽減を図れることも大きな魅力です。
一方で、社宅管理担当者を置いている企業の場合、代行業者に業務を委託することによって既存の担当者の役割が減少し、雇用契約の見直しが必要になることがあります。とはいえ、社宅代行サービスを利用するほうがスムーズかつ的確な管理を実現しやすいため、自社における業務のバランスや雇用状況も踏まえつつ、サービスの利用を検討するとよいでしょう。
社宅代行サービスの特徴や選び方については別の記事でもご紹介しています。詳しく知りたい方はこちらも併せてご覧ください。
>>社宅代行サービスとは?メリット・デメリットや選び方を解説
実績豊富な社宅代行サービスへ相談を
社宅管理の代行を依頼する際は、借り上げ社宅の代行実績に注目してサービスを選ぶとよいでしょう。豊富な実績を持つ業者に相談することで、適切なアドバイスを得ながら円滑な社宅運用を行える可能性が高まります。
LIXILリアルティでは、借り上げ社宅管理の業務負担・コストを削減する社宅代行サービスをご提供しています。これまでに様々な企業の社宅運用をサポートしてきた実績があり、それぞれの企業様の方針に合った入居期限のアドバイスが可能です。
社宅の導入を検討している、社宅管理の見直しを行っている担当者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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まとめ
借り上げ社宅に入居期限を設けることで、社宅の公平性を保てたり、維持・管理に必要なコストを抑えられたりするメリットが期待できます。ただし、入居期限によっては従業員が不満を抱いたり、管理に手間がかかったりする可能性があるため、従業員のニーズや意見などを考慮しながら慎重に期限を設定することが大切です。また、入居期限に関するトラブル回避のために、期限満了後の退去・延長手続きについてのルールを明確に定め、周知しておくことも求められます。
LIXILリアルティの社宅代行サービスでは、入居期限の設定に関するアドバイスはもちろん、あらゆる社宅業務の一元管理が可能です。契約更新手続きや原状回復費用の精査、送金管理業務といった全般的な管理業務に対応しているため、従来の業務負担を大きく減らせるでしょう。
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