はじめに
法人が従業員に借り上げ社宅などを提供する際、物件によっては連帯保証人が必要となるケースがあります。連帯保証人が必要な場合、用意するものや書類が増えるため、法人契約の連帯保証人の取り扱いや、効率化のコツについて知りたい不動産・総務担当者や責任者の方も多いのではないでしょうか。
今回は、社宅の法人契約の概要を解説したうえで、賃貸物件の法人契約における連帯保証人の取り扱いや、個人が連帯保証人になる場合の留意点を紹介します。
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社宅の法人契約とは?
企業が従業員に社宅を用意する方法のひとつが、借り上げ社宅です。借り上げ社宅を提供する場合は、貸主との賃貸契約は「法人契約」の扱いとなります。法人として賃貸契約を結び、社員に転貸する方法です。
借り上げ社宅を用意することで、福利厚生費での計上によって節税対策になったり、従業員の定着率アップ、人材採用の強化につながったりといったことが、企業にとってメリットとなります。また、従業員にとっても、経済的な負担を減らせたり、契約の手間を省略できたりといったメリットがあります。大企業や上場企業、全国展開している企業などで、多く導入されている傾向にある福利厚生のひとつです。
賃貸物件の法人契約における連帯保証人の取り扱い
賃貸物件の法人契約における連帯保証人とは、賃料や原状回復義務に関するリスクの軽減を目的に、法人と同等の支払い義務を負う第三者を指します。民法で定められている連帯保証は、法律上の契約です。賃貸物件の借主である法人が、賃貸料や設備を壊してしまったときの修繕費などの費用を支払えない場合、連帯保証人が支払いを求められ、拒否することはできません。
連帯保証人の取り扱い方法として、以下の3つが挙げられます。
- 法人の代表者を保証人にする
- 入居者を保証人にする
- 保証会社を利用する
それぞれの取り扱い方法について、詳しく見ていきましょう。
法人の代表者を保証人にする
1つ目は、賃貸物件の連帯保証人を、法人の代表者が務めるケースです。法人が連帯保証人を擁立する必要がある際は、代表者が保証人になることが多い傾向にあります。
代表者を連帯保証人に設定する際は、信用情報の確認や審査が行われるため、代表者自身の収入が安定していて、信用がおける人物である必要があります。そのため、法人の代表者の信用情報に問題がある場合は、賃貸借契約の締結が難航するおそれもあります。また、社宅の賃貸契約でトラブルが発生すると、代表者個人の資産に影響を及ぼすリスクがあることにも留意しなければなりません。
入居者を保証人にする
2つ目は、借り上げ社宅に入居する従業員が、連帯保証人になるケースです。契約前に従業員に対して、連帯保証人になることについて丁寧に説明する必要があります。従業員への説明が不足していると、のちのちトラブルに発展するおそれもあるので注意しましょう。
保証会社を利用する
3つ目は、法人の代表者や従業員といった個人の連帯保証人を立てる代わりに、保証会社を利用するケースです。保証会社とは、借主が賃料などを滞納した際に、法人に代わって立て替えてくれる企業を指します。「賃貸保証会社」や「家賃保証会社」と呼ばれることもあります。
法人が保証会社に保証料を支払うことで、家賃や更新料、原状回復費用を保証してくれるため、法人あるいは代表者の信用力を補うこともできます。保証料の相場としては、契約時に家賃の約1~2ヵ月分を支払うことが一般的です。保証会社によっては、相談サービスなども利用できるので、社宅運営における安定性を高めることにもつながるでしょう。
保証会社を利用することで、連帯保証人は不要になることが一般的ですが、貸主によっては連帯保証人の擁立と保証会社の加入のどちらも必要になるケースがあります。社宅物件を選ぶ際に、これらの条件面についてもしっかりと確認しておきましょう。
個人が連帯保証人になる場合の留意点
法人の代表者や、入居従業員など、個人が連帯保証人になる場合、2020年4月の民法改正により、以下の3点に留意が必要となりました。
- 個人の連帯保証人に対する極度額(上限額)の設定
- 情報提供の義務化
- 元本確定事由の新設
個人の連帯保証人に対する極度額(上限額)の設定
個人が連帯保証人になる際に、極度額(上限額)の設定が必要になりました。極度額を設定せずに個人が保証人になる契約を締結しても、保証契約は無効となり、連帯保証人としての支払い義務は発生しません。
連帯保証人に対する極度額の設定が必要になったことで、未払い賃料や遅延損害金を個人が負担するリスクが軽減されます。ただし、極度額の設定が義務付けられたのは個人のみであり、法人は対象外です。
情報提供の義務化
借主(主債務者)から、個人の連帯保証人への情報提供が義務化されていることにも留意が必要です。借主は、第三者の個人に連帯保証人になることを依頼する際、以下の情報を提供しなければなりません。
- ①主債務者の財産や収支の状況
- ②主債務以外の債務の金額や履行状況等に関する情報
上記の情報を提供することで、個人の連帯保証人がリスクを適切に把握できるようになり、万一、トラブルが発生した際も迅速に対応しやすくなります。
元本確定事由の新設
連帯保証人が保証する「元本確定事由」が新設されたことにも留意が必要です。元本確定事由とは、一定の事由が発生した時点で、連帯保証人が負う借主の債務額が確定し、それ以上の責任は問われないというもの。元本確定事由は以下のとおりです。
- ① 債権者が保証人の財産について強制執行や担保権の実行を申し立てたとき
- ②保証人が破産手続開始の決定を受けたとき
- ③主債務者又は保証人が死亡したとき
上記の元本確定事由が新設されたことにより、連帯保証人の責任範囲が明確になりました。
賃貸物件の法人契約で連帯保証人が必要となるケース
賃貸物件の法人契約で連帯保証人が必要となるかは、貸主の判断や提示される条件によって異なります。一般に、連帯保証人が必要となるのは以下3つのケースです。
- 連帯保証人の擁立が義務付けられている物件
- 保証会社の利用と選択できたが、連帯保証人を選んだ場合
- 借主の信用情報に問題がある場合
それぞれのケースについて、詳しく解説します。
連帯保証人の擁立が義務付けられている物件
賃貸物件の中には、借主の信用度に関わらず、連帯保証人の擁立が義務付けられている物件があります。法人の信用度は関係がないため、連帯保証人の擁立が難しい場合は、別の賃貸物件を探してみるのも手です。
保証会社の利用と選択できたが、連帯保証人を選んだ場合
法人契約を結ぶうえで、保証会社の利用または連帯保証人を擁立する形のどちらかを選択できたものの、結果的に連帯保証人の擁立を選ぶケースがあります。
前述のとおり、保証会社を利用する際は保証料の負担がかかるため、法人として一定のコストがかかることになります。一方、法人の代表者、あるいは社宅に入居する従業員の個人の連帯保証人を立てる場合は、保証料などのコスト負担が発生しません。そのため、コストカット目的で連帯保証人を選ぶケースもあるでしょう。
借主の信用情報に問題がある場合
借主である法人の信用情報に問題がある場合も、連帯保証人を立てる必要があります。法人の信用情報について確認する指標として、以下が挙げられます。
- 企業の設立年数
- 従業員数
- 資本金
- 上場の有無
例えば、企業を設立して1~2年ほどしか経過していない場合、安定的な経営を続けていけるかが不透明なため、連帯保証人の擁立を求められる可能性が高まります。設立して10~20年ほど経つ企業なら、経営状況の安定性や実績が見込まれ、連帯保証人を立てずに済む可能性もあります。
また、法人の企業規模も、連帯保証人が必要か否かを左右するポイントです。連帯保証人を立てずに済む企業の具体例として、多くの従業員を抱えている企業や資本金が1億円以上ある企業、上場企業などが該当します。
賃貸物件で法人契する際に必要なもの
法人契約する際に必要なものとして、以下が挙げられます。
【法人契約で必要なもの】
- 会社謄本
- 決算報告書
- 企業の概要が記載されたパンフレット等
- 法人税納税証明書
- 法人の印鑑証明書
- 入居者の住民票
- 入居者の身分証明書
- 入居者の社員証のコピー
また、連帯保証人を立てる場合は、以下の書類が追加で必要です。
【連帯保証人を立てる場合に必要なもの】
- 住民票
- 印鑑証明書
- 連帯保証人の実印
- 身分証明書のコピー
- 収入証明書のコピー
法人の規模によっては、上記のうち一部が提出不要になるケースがあります。また、連帯保証人が年金受給者の場合、年金振込通知書のコピーが必要になる可能性もあります。
賃貸住宅の法人契約の詳しい内容や、審査基準についてなどはこちらの記事で詳しく記載しております。
>>賃貸住宅の法人契約で審査に落ちる!?審査を通すポイントとは
煩雑な手続きの多い法人契約を効率化するコツ
賃貸物件を借りて社宅として提供するメリットは大きいものの、法人契約であるため、個人で契約を結ぶよりも必要書類が多く、手続きも煩雑です。連帯保証人が必要な場合は、担当者の負担がさらに増えてしまいます。
そこで、賃貸物件の法人契約を効率化するコツを3つ紹介します。
- 短期賃貸マンションの利用
- 連帯保証人不要物件を探す
- 社宅代行サービスを利用する
上記のコツを把握して、賃貸物件の法人契約をスムーズに行いましょう。
短期賃貸マンションの利用
賃料の前払い制を採用していることが一般的な短期賃貸マンションでは、連帯保証人を必要としない物件が多くあります。また、保証人を必要としている場合であっても、緊急連絡先として名前や電話番号の記載のみで済むケースが多いため、煩雑な手続きを省け、効率化できるでしょう。
短期賃貸マンションなら、必要な期間のみ従業員を入居させられるので、賃料の発生を抑えられるメリットもあります。
連帯保証人不要物件を探す
連帯保証人を立てなくても法人契約が可能な物件として、保証会社を利用できる物件やUR賃貸物件などを探すのも手です。国土交通省が管理・運営しているUR賃貸物件の場合、連帯保証人に加えて、保証会社の加入も不要です。
ただし、民間の賃貸物件に比べると入居申込みの条件が厳しいことや、家賃相場が高めに設定されていることには留意しておきましょう。
社宅代行サービスを利用する
社宅代行サービスとは、社宅管理における契約・解約・更新などに関する業務を委託できるサービスを指します。社宅の法人契約を締結する際は、物件の選定や申込み、契約書の確認といった一連の契約業務を代行してもらえるので、自社の社宅管理業務に関する負担を大幅に減らせます。
また、入居している従業員が退去する際の解約手続きや、更新時の手続きなど、新規契約以降に発生する業務に関しても適切にサポートしてくれることが魅力です。社宅代行サービスを利用すれば、業務効率化を図れるだけでなく、入居する従業員の満足度を高めることにもつながるでしょう。
LIXILリアルティでは、借り上げ社宅管理の業務負担・コストを削減する社宅代行サービスをご提供しています。社宅の導入を検討している、社宅管理の見直しを行っている担当者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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社宅代行サービスを利用して法人契約時の負担を減らす
賃貸物件の法人契約や、連帯保証人の擁立が必要となる場合、社宅担当者には以下のような業務負担が発生します。
- 物件手配・契約などの入居手続き
- 法人契約で必要な提出書類の準備
- 連帯保証人の擁立に必要な提出書類の準備
加えて、法人契約を終えてからも、入居者の給与控除や賃貸物件の更新確認、トラブル対応などの業務が発生します。これらの業務負担を減らすために、社宅代行サービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
LIXILリアルティの社宅代行サービスを導入すれば、経験豊富なスタッフが社宅業務全般を一元的に管理するので、業務負担を大幅に削減することが可能です。具体的には、企業の総務担当者が担う新規・更新・解約に関する業務のほか、毎月の家賃送金や支払調書のデータ整理などもお任せいただけます。社宅担当者の業務負担が減ることで、本来のコア業務に注力できるようになるでしょう。
また、自社の社宅担当者が退職された際のアウトソーシングや、マンスリー物件の手配サポートなど、お客様の課題に寄り添ったサービスの提供が可能なことも、LIXILリアルティの強みです。
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まとめ
法人の賃貸契約で連帯保証人が必要な場合は、法人の代表者あるいは入居者を保証人にする方法や、保証会社を利用する方法を選べます。連帯保証人が必要か否かは、物件契約時の条件や、貸主側の判断によっても異なります。
煩雑な手続きが多く発生する法人契約を効率化するには、連帯保証人不要物件の選定や、社宅代行サービスの利用を検討しましょう。社宅代行サービスを利用すれば、法人契約時だけではなく、社宅に従業員が入居してからの更新・解約業務なども全般的に委託できるので、社宅管理の担当者が抱える業務負担を大幅に減らせます。